
9月27日、松本流星選手がラッセル・アコスタ選手に判定勝ちし、WBO世界ミニマム級暫定王座を獲得しました。
僕は試合前、前に出てくるアコスタ選手に対して、松本選手が動きながらパンチを当てていくと予想していました。展開は大きく外れませんでしたが、松本選手は思った以上に強気でした。そして、アコスタ選手も予想以上に強かった。ポイントでは松本選手が先行していても、最後まで気の抜けない試合でした。
松本選手はどうやって勝ち切ったのか。試合を見て感じたことをお話しします。
予想より強気だった松本流星

アコスタ選手は前に出てくるファイターです。松本選手はスピードを生かし、もう少しアウトボクシング寄りにさばくと思っていました。
動きながらロングレンジでパンチを当て、相手を削っていく展開です。
実際に松本選手は動きながら戦い、いいパンチも当てていました。ただ、序盤から攻め方はかなり強気だった印象です。
アコスタ選手は、僕が思っていた以上に強かったです。
頑丈で、パンチも怖い。サウスポーを少し苦手にするかもしれないと思っていましたが、松本選手にもいいパンチを当ててきました。パンチを当てる技術がありましたね。
松本選手はそれほど大きな選手ではないので、自分が打ちにいくときには、ある程度相手に近づく必要があります。
その距離にはアコスタ選手の怖いパンチもあったので、試合自体が非常に面白かったです。
左を当てても、前進をやめないアコスタ

アコスタ選手が前に出てきたところへ、松本選手は左を結構当てていたと思います。それでもアコスタ選手は頑丈でしたし、気持ちも強かったです。
松本選手は打ち分けがうまく、パンチの角度も多彩で、スピードもあります。
攻撃を受け続ければ、アコスタ選手ももう少し嫌になってくるかと思いました。ボディも嫌がっていたように見えます。
ただ、そこで折れずにプレッシャーをかけ、最後までパンチを狙ってきました。
アコスタ選手の攻撃はフック系が中心かと思っていましたが、真っすぐなパンチもきちんと打っていました。
フックだけなら松本選手には当たりにくいと思っていたので、その点も怖かったです。
両選手の距離は思ったより近く、良くも悪くもかみ合う展開になりました。松本選手も左フックなど怖いパンチを受ける場面はありましたが、効いた素振りは見せませんでした。
ポイントで先行していても、危ない場面はあった

松本選手は足を使い、サイドに動いてボディを打つこともできていました。
その一方で、その場に残って打ち合う場面もありました。個人的には、倒したい気持ちもあったのかなと思います。
左の打ち分けは良かったですし、僕にはボディのほうがアコスタ選手に効いていたように見えました。
ただ、アコスタ選手はボディを嫌がっても折れず、しっかり狙ってくる。そこが怖かったです。
松本選手が相手の攻撃を受けたのは、自身がかなり攻撃的に戦っていたことも関係していると思います。
もう少しポイントを取ることに徹するかと思いましたが、強気に出ていました。相打ちになるタイミングや、近い距離にとどまった場面には危なさがありましたね。
中盤までのポイントは松本選手が取っていたと思います。
全体を通して、アコスタ選手のほうが松本選手に合わせている印象でした。松本選手はテンポとスピードがあり、先に打ってヒットを重ねられていた。
ただ、最後まで気は抜けませんでした。
9ラウンド、なぜ足を止めて打ち合ったのか

9ラウンドには、松本選手がリング中央で足を止めて打ち合っていました。
松本選手がある程度ポイントで先行していたなら、アコスタ選手は後半に巻き返す必要があります。
アウトボクシングでポイントを取り返すタイプではないので、打ち合いに持ち込もうとするはずです。
そこで松本選手が引かずに打ち勝てば、アコスタ選手は逆転のためにできることが少なくなる。
相手が松本選手の心を折りにきたところを、逆に跳ね返す。そうやってアコスタ選手の逆転の芽を摘もうとした可能性はあると思います。
もちろん、本人が「ここは引いてはいけない」と判断したのか、陣営から強気に戦う指示があったのかは分かりません。
もともと松本選手が打ち合いを好むのかもしれません。
ただ、あの場面で強気な姿勢を見せ、打ち合ったことは印象に残りました。
最後まで変わらなかった表情と動き

松本選手を見ていて、すごいと思ったのはスタミナです。ラウンドを終えてコーナーに戻ったときも、表情がほとんど変わりませんでした。
疲れもあったと思いますが、それを見せずにずっとポーカーフェイスでしたね。
動きも特に落ちていませんでした。精神力も含めて、スタミナは半端じゃないと思います。
アコスタ選手も、最後まであまり動きが落ちなかった印象です。標高の高い場所で練習していたという話もあり、スタミナを強化してきたのだと思います。
松本が勝ち切れた理由

最終ラウンドまで見て、ポイントでは松本選手が勝っていると思いました。フルマークほどではありませんが、ある程度の差はあったという見方です。
松本選手は手数が多く、見栄えが良かった。パンチも一発一発しっかり打っていました。
アコスタ選手も力のあるパンチを打っていましたが、松本選手は効いたようには見せませんでした。
一方で、アコスタ選手にはボディを嫌がるような場面があったと思います。
勝てた理由は、まずボクシングのスキルが上だったこと。そして、最後まで落ちないスタミナと運動量です。
アマチュア時代から磨いてきた技術にスピードがあり、積極性もある。強い選手だと感じました。
松本選手にはパンチを受けてもダメージがあるようには見えませんでした。
打たれ強いのかもしれませんし、相手のパンチをよく見て、衝撃を逃がしていた可能性もあります。
「まだまだ」と考える松本は、さらに強くなる

試合を見ていて怖い場面はありました。ただ、強い相手にしっかり勝ったので、僕は落ち込む必要はまったくないと思います。
すごく強い選手でした。
松本選手自身は、試合後もまだ足りないと感じているようです。
自分で反省点や課題を見つける選手は、どんどん伸びていきます。今回の勝利にも満足していないなら、まだ強くなると思います。
ボクシングの幅を広げたいという話もありますが、僕から見ると、すでにいろいろなことができます。
アウトボクシングもできるし、カウンターもある。かなり穴の少ないチャンピオンだと感じました。本人の理想が高いのでしょうね。
今後は世界のトップとの試合も見たい

今後は、今回とは違うタイプの相手と、松本選手がどうボクシングを組み立てるのかも見てみたいです。
正規王者のオスカー・コラゾ選手と戦うとしたら、松本選手のスピードやボクシングの技術は通用すると思います。一方で、今回もちょいちょい怖いタイミングでパンチを受けていたように見えたので、そこは気になります。
僕は松本選手が今回の王座を取ると思っていました。だからこそ、ここからどうビッグマッチにつなげていくのかが楽しみです。統一戦も見たいですね。
次の試合では、松本選手がさらに強さを見せようとするかもしれません。
ただ、倒すことにこだわりすぎると危ないので、まずはしっかり勝ち切ることも大事だと思います。
アコスタ選手は僕の想像以上に強く、面白い試合になりました。その相手に松本選手はしっかり勝ち切った。
僕もミニマム級の選手を見ているので、世界のトップがどのくらいのレベルなのか、勉強になる試合でした。
今後、松本選手が統一戦に進むのか、どのような相手と戦っていくのか、引き続き注目したいです。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
元プロボクサー
世界ランキング最高7位
第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
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