
世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥選手が、自身のXで「バムをダラダラ待つ気はないからフェザー級に行く準備も始めるよ」と投稿しました。
ジェシー・“バム”・ロドリゲスとの対戦が不透明となるなか、井上選手のフェザー級挑戦が一気に現実味を帯びてきました。
では、井上選手がフェザー級へ転向した場合、現在の世界王者の中で誰との試合が一番面白いのか。
僕が最も見たいのは、ブルース・キャリントンとの対戦です。
今回はキャリントンをはじめ、ラファエル・エスピノサ、ブランドン・フィゲロア、アンジェロ・レオとの相性や、井上選手がフェザー級でどこまで戦えるのかを考えていきます。
一番見たいのはブルース・キャリントン
僕が井上選手との対戦を一番見たいのは、ブルース・キャリントンです。
僕はもともと、激闘よりもテクニカルなボクシングが好きです。シャクール・スティーブンソンやギジェルモ・リゴンドー、勝ちに徹したときのフロイド・メイウェザーのような、相手のパンチをもらわずに試合を組み立てるボクシングに魅力を感じます。
キャリントンも、スピードやジャブ、ディフェンス技術を持ったアメリカンスタイルの選手です。
フェザー級の選手なので井上選手よりは大きいですが、極端に体格が違うわけではありません。お互いの技術がしっかりと出る、テクニカルな試合になると思います。
技術戦として考えれば、現在のフェザー級で一番面白い組み合わせではないでしょうか。
序盤はヒリヒリした展開になる
実際に井上選手とキャリントンが戦った場合、序盤はかなりヒリヒリした展開になると思います。
井上選手もフェザー級へ上げれば、これまで以上に相手のパンチを警戒して戦うはずです。キャリントンにはスピードと技術があり、パンチ力も決してない選手ではありません。
一瞬の瞬発力と一発の破壊力では、井上選手のほうが上だと思います。
ただし、キャリントンにはフェザー級の体格とリーチがあります。井上選手がその距離をどのように埋めるのかが、ひとつのポイントになります。
キャリントンは前に出て打ち合うよりも、自分のサイズを生かして距離を使うと思います。井上選手の強打を警戒しながら、ジャブやスピードを使って戦うのではないでしょうか。
そのなかで井上選手がプレッシャーをかけ、徐々に自分のペースへ持ち込めれば、キャリントンを飲み込んでいく可能性があります。
キャリントン戦で井上尚弥の「対応力」が試される
キャリントンは、井上選手よりも体が大きく、基本的なスピードやパンチ力もあり、アメリカでも評価されているテクニカルな選手です。
そのキャリントンを井上選手が圧倒したら、本当にすごいことだと思います。
フェザー級になると、対戦相手のパワー、スピード、体格、タフネスといった、すべての数値が大きくなります。その相手に対しても、井上選手の技術とパンチ力が通用するのか。
また、すべてのパンチを避け続けるのは難しいため、井上選手自身のタフネスも試されます。
より大きく、強く、速く、うまい相手に対して、井上選手がどこまで対応できるのか。それを見るという意味でも、キャリントン戦は非常に興味深いです。
井上尚弥が後半ストップ、または判定勝ち
勝敗予想としては、井上選手がやや有利だと考えています。割合で表すなら、井上選手が6.5、キャリントンが3.5くらいです。
序盤に井上選手がペースをつかみ、プレッシャーをかけられるようになれば、キャリントンは徐々に井上選手のパンチ力にひるみ始めると思います。
そこから中盤から後半にかけて、井上選手がストップする可能性があります。
一方で、キャリントンが倒されないことを優先し、距離を取る戦いに徹した場合は、井上選手の判定勝ちになるかもしれません。
井上選手のジャブがキャリントンにどう当たるのか。そして、井上選手がキャリントンのジャブやパンチを受けたときに、どのように感じるのか。
実際に戦ってみなければ分からない部分はありますが、僕は井上選手がフェザー級でも、かなり戦えるのではないかと思っています。
最も勝敗が分からないのはラファエル・エスピノサ
キャリントンとは違う意味で見てみたいのが、ラファエル・エスピノサとの対戦です。
エスピノサは井上選手と比べて明らかに大きく、身長差は約20センチあります。これだけ体格が違う相手に対して、井上選手がどのように戦うのかを見てみたいです。
エスピノサは、長身だからといって距離を取り続けるアウトボクサーではありません。自分から前へ出て、近い距離でも打ち合います。パンチ力もあり、接近戦でも強い選手です。
井上選手としては、単純に距離を潰せばいいという相手ではありません。
エスピノサは上からパンチを打ち下ろせますが、井上選手は約20センチ高い位置にある相手の顔や体へ、下からパンチを打たなければなりません。普段とは角度も距離も大きく変わるため、かなり打ちにくいと思います。
スピードや一発のパンチ力など、一つひとつの能力では井上選手のほうが上かもしれません。しかし、その差を埋めるほどエスピノサの体が大きいという問題があります。
井上選手がディフェンスに徹すれば、エスピノサのパンチをある程度避けることはできると思います。ただ、そこからどう攻撃へつなげ、あの体格の相手にパンチを当てていくのか。
現在のフェザー級王者の中で、井上選手が負ける可能性を最も感じる相手を挙げるなら、僕はエスピノサです。
体が大きすぎるうえにパンチもあるため、かなり厄介な相手だと思います。
ブランドン・フィゲロアは前半で倒せるか
ブランドン・フィゲロアは長身でありながら、接近戦で非常に多くのパンチを出す選手です。スタミナがあり、しつこく前へ出続けます。
ただ、僕は井上選手が前半で倒す可能性があると思っています。
フィゲロアはパンチを受ける場面が多いため、井上選手のパンチも前半からかなり当たるのではないでしょうか。
問題は、そのパンチをフィゲロアが耐えた場合です。
前半で倒れず、井上選手のパンチを受けながら前へ出続けてきた場合、後半は体力勝負になる可能性があります。フィゲロアの手数とスタミナに巻き込まれると、井上選手もかなり消耗すると思います。
井上選手の一発のパンチ力自体は、フェザー級でも通用するはずです。
むしろ問題になるのは、相手に押し込まれたときのフィジカルや、体をぶつけ合ったときの強さです。
フィゲロアは、前半で倒せなければ面倒な相手です。それでも僕は、井上選手が前半で倒す可能性のほうが高いと予想します。
アンジェロ・レオには普通に勝つと予想
アンジェロ・レオには一発で試合を変えられるパンチがあります。その一発には注意が必要ですが、僕は井上選手が普通に勝つのではないかと思っています。
レオにはカウンターのタイミングとパンチ力がありますが、井上選手とはスピードに差があります。
パンチ力のある相手には最後まで集中しなければなりませんが、スピード差があれば相手のパンチを避けやすくなります。
また、レオはフェザー級の中ではそれほど大きな選手ではありません。もともとスーパーバンタム級で戦っていた選手でもあり、エスピノサやフィゲロアほどの体格差はありません。
対戦相性としても、井上選手にとっては比較的かみ合いやすい相手だと思います。
現在の4王者の中で、「井上選手が勝つだろう」と最も予想しやすいのはアンジェロ・レオです。
フェザー級王者の強さは単純には並べられない
フェザー級の4王者について考えると、誰が一番強いのかは単純には決められません。
キャリントンとフィゲロアが戦えば、フィゲロアが勝つ展開もイメージできます。一方で、キャリントンとエスピノサなら、キャリントンが勝つ可能性もあると思います。
フィゲロアとエスピノサ、アンジェロ・レオとフィゲロアなど、組み合わせによって結果は大きく変わります。
ボクシングは、単純な能力の比較だけではなく、スタイルや相性が結果に影響する競技です。
そのうえで、僕がスタイル的に一番見たいのはキャリントンです。
エスピノサ戦は体格差が大きすぎて、どのような試合になるか分からない面白さがあります。フィゲロアは前半で倒せなければ面倒な相手で、アンジェロ・レオには井上選手が普通に勝つと予想します。
それぞれに異なる見どころがありますが、井上選手のフェザー級への適応力を最も見られるのは、キャリントン戦ではないでしょうか。
テストマッチを挟まず、初戦から王者と戦ってほしい
井上選手がフェザー級へ上げるなら、僕は初戦からキャリントンと戦ってほしいです。
フェザー級の体格に慣れるための試合や、世界ランカーとのテストマッチを挟む必要はないと思っています。
井上選手のような、少し“チート”を使っているような圧倒的な選手には、いきなり強い相手へ挑んでほしいです。
マニー・パッキャオも、階級を大きく飛び越えながら強豪へ挑戦してきました。フライ級で戦っていたパッキャオが、スーパーバンタム級の世界戦へ挑み、勝利したこともあります。
井上選手もスーパーバンタム級で圧倒的な地位を築いています。
ここからフェザー級へ上げるのであれば、フェザー級の“ラスボス”といきなり戦ってほしい。そして、そこから4団体統一を目指してほしいと思います。
実現すれば、3階級での4団体統一という、さらに大きな記録も見えてきます。
井上尚弥のフェザー級挑戦を一人のファンとして見たい
僕はトレーナーですが、井上選手に関しては一人のボクシングファンとして見ています。
バム・ロドリゲスとの試合が実現するのか、それともフェザー級へ進むのか。今後どうなっても、井上選手が選ぶ道を楽しみにしています。
ただ、もしフェザー級へ上げるのであれば、テストマッチを挟まず、初戦から世界王者へ挑んでほしい。
最も見たい相手はブルース・キャリントン。最も勝敗が分からず、危険だと感じる相手はラファエル・エスピノサです。
井上選手が、これまで以上に大きく、強く、速い相手に対して、どこまで自分のボクシングを見せられるのか。
フェザー級での新たな挑戦を楽しみにしています。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
元プロボクサー
世界ランキング最高7位
第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
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