
西田凌佑選手がサム・グッドマン選手に判定で敗れ、2階級制覇はなりませんでした。
試合では西田選手に2度の減点があり、その判定が気になった方も多いと思います。
僕も減点には納得できない部分がありました。
ただ、減点がなければ西田選手が勝っていたかというと、そこは別の話です。
グッドマン選手がどのように距離を詰め、西田選手のボクシングを崩したのか。試合を見て感じたことをお話しします。
想像以上にパワフルだったグッドマン

グッドマン選手は、もっとジャブを突いて中間距離で戦ってくると思っていました。
ところが実際には、想像以上にフィジカルを使って前に出てきた。「ああいうボクシングもできるんだ」と感じました。
西田選手がパワーで押される場面も、結構目立っていたと思います。
グッドマン選手は、サウスポーの西田選手を相手にインファイトを仕掛ける技術も予想以上に強かったです。フィジカルを含めた技術の差が、勝敗を分けたと思います。
1ラウンド目は西田選手の左も当たっていましたし、ある程度は狙いどおりに戦えていたと思います。
ただ、そのパンチでグッドマン選手の前進を止めたり、効かせたりするには少し足りなかった。
グッドマン選手も、かなり前に出る気持ちが強かったですね。
距離を取り直しても、接近戦に戻された

西田選手はガードも防御技術もしっかりしています。
それでも近い距離では体勢を崩され、ダメージがそこまで大きくなかったとしても、見栄えはグッドマン選手のほうが良かったです。
もう少し相手の力をいなしたり、かわしたりできれば良かったのかもしれません。近い距離で戦うなら、下がらないことも必要だったと思います。
西田選手が距離を取り直そうとしても、グッドマン選手がまた詰めてくる。
今回は、西田選手が距離をキープする技術よりも、グッドマン選手が距離を潰す技術のほうが上回ったのだと思います。
グッドマン選手は、近い距離で腕を畳んで打つのもうまかったです。
リーチはそれほど長くないように見えましたが、上半身の力があるように感じました。
腰の入った大きなパンチではなくても、近い距離でゴツゴツと打ってくる。
そこでも少しフィジカルの差を感じましたし、グッドマン選手は気持ちもたぎっていました。
西田の左ストレートとボディが生きにくかった理由

距離が近くなると、西田選手の得意な左ストレートやボディは使いづらくなります。
グッドマン選手がそこでうまく対応していたため、パンチの効果も半減してしまったように思います。
頭をくっつけてくる戦い方など、多少ダーティーな技術もありました。
ただ、それを考慮してもグッドマン選手の接近戦はうまかったです。
8、9ラウンドには西田選手が打ち返し、パンチが当たる場面もありました。
それでも、グッドマン選手の勢いや前に出る力のほうが勝っているように見えました。勝ちたい気持ちも強く感じましたね。
西田への2度の減点は、納得しづらかった

今回のレフェリングについては、正直、かなり気になりました。グッドマン選手のバッティングは、もっと注意されてもよかったと思います。
一方で、西田選手のローブローとされたパンチは、スロー映像で見ると普通のボディに見えるものもありました。
注意する必要があるのか、まして減点までする必要があったのか、疑問です。
2度も減点されると、選手はボディを打つのをためらってしまいます。次も取られたらどうなるのかと考えながら戦うことになりますから。
西田選手がジャブで距離を取ろうとした際にも、相手を押さえないよう注意されていました。
あれまで注意されるなら、ジャブを伸ばしづらくなってしまう。スロー映像も出ていますし、レフェリングについて検証したり、陣営が抗議したりしてもいいレベルだと僕は思います。
自分が陣営にいたら、かなり怒る場面です。実際、武市トレーナーもインターバル中に怒っていました。
ボディは西田選手の武器です。「また減点されるかもしれない」と思えば打ちにくくなり、攻撃も偏ります。
この減点が西田選手を縛った影響は大きかったと思います。
通常は、まず注意があり、繰り返した場合に減点という流れが自然だと感じます。
明らかに狙って打っているような場合や、相手が苦しむようなパンチなら減点も仕方ありません。
でも、今回はそういう場面には見えませんでした。
減点がなければ西田が勝っていたのか

減点がなければ点差は縮まったと思いますが、それで西田選手が勝てたかというと、正直厳しかったと思います。
試合全体の流れはグッドマン選手にありました。減点がなければ西田選手がボディで倒していた、とも思いません。
それでも、減点によって西田選手の攻撃が制限されたことは確かです。
減点後に大きく戦い方が変わったとまでは言えませんが、注意しながら戦うだけでも攻撃にはためらいが出ます。
もっとボディを打ちたくても、「また取られるかもしれない」と思ってしまうはずです。
グッドマン選手の頭やプッシュについても、もう少し注意があってよかったのではないかと感じました。
西田は何をしたかったのか

今回の西田選手が、ロングレンジを保って戦いたかったのか、それとも近い距離でも相手を崩していきたかったのか。
まず、そこが僕にははっきり見えませんでした。
どちらを狙っていたとしても、やりたいことを十分にはできず、グッドマン選手に崩されてしまったように思います。
思うように戦えなかったときの対処でも、グッドマン選手が少し上だったのかもしれません。やはりフィジカルの差も感じました。
グッドマン選手が中谷潤人選手と西田選手の試合を参考にした可能性は、多少あるかもしれません。
ただ、西田選手はエマヌエル・ロドリゲス選手との試合ではボディを効かせ、近い距離で戦う技術も見せています。
グッドマン選手もインファイトに行くかどうかを考えたうえで、試合中に仕掛けてみて「これはいける」と感じ、あの戦い方にしたのではないでしょうか。
僕は、中谷選手の戦い方をそのまま参考にしたとは思いません。
再戦するなら、ロングで先にポイントを取る

もし再戦があるなら、西田選手はもう少しロングレンジで相手を削り、先にポイントを取りたいです。
そのうえで距離を詰められたときも、下がらずに崩し合うことが必要だと思います。
近い距離で、たくさん打つ必要はないかもしれません。
まずは崩し負けず、その攻防の最後に印象のいいパンチを当ててポイントを取る。そういう戦い方ができれば、勝機はあると思います。
もちろん、パワーで押されたときに押し負ける心配はあります。
そこを立ち位置などで補い、体勢を崩されずに戦えるかが大事です。ただ、今回はグッドマン選手が強かったですね。
グッドマンが井上尚弥と戦ったら

グッドマン選手は試合後、井上尚弥選手との対戦にも意欲を見せました。
ただ、井上選手と戦ったら、僕は正直、倒されると思います。井上選手にとってはやりやすい相手ではないでしょうか。
グッドマン選手はインファイトもできますが、ある程度は正攻法のファイターです。
距離を取ればきれいなボクシングもする。
井上選手を相手にするなら、もっと何をしてくるか分からないくらい強引に出たり、大きなパンチを振ってきたりするタイプのほうが、チャンスはあるかもしれません。
今回見たグッドマン選手のスタイルなら、井上選手は戦いやすいと思います。
西田には、まず休んでほしい

西田選手がこの先どうするかは、まず本人の気持ちが一番です。
一度世界王者になり、階級を上げて2階級制覇に挑戦した。その挑戦に敗れたタイミングですから、いろいろ悩むと思います。
一度ボクシングから離れる可能性もあるでしょう。
ただ、今すぐ辞めなければいけない年齢だとは思いませんし、キャリアもそこまで長くありません。
まずは休んで、家族と過ごしてリフレッシュしてほしいです。そのうえで「またボクシングをやりたい」と思えたなら、頑張ってほしいと思います。
スーパーバンタム級で続けるなら、階級にもっとフィットする必要は感じました。
グッドマン選手も、この階級で特別にパワフルな選手というわけではないと思います。
もっとパワーのある選手もいますから、西田選手は決定力も含めて力をつけていく必要があるでしょう。
西田選手には、落ち着いて頭のいいボクシングをする印象があります。まだ伸ばせるところもあると思います。
今回はグッドマン選手が想像以上に強かったですが、西田選手にはまずしっかり休んで、また戦いたいと思えたときに頑張ってほしいです。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
元プロボクサー
世界ランキング最高7位
第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
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