
こんにちは、ボクシングトレーナーの椎野大輝です。
11月29日、両国国技館で行われるWBA世界バンタム級タイトルマッチで、増田陸選手と堤聖也選手が再び対戦します。
前回は堤選手が日本王者として増田選手の挑戦を受け、判定勝ちを収めました。今回は増田選手が世界王者、堤選手が挑戦者という立場で再戦を迎えます。
発表会見では、堤選手がベルトを持参し、自分がチャンピオンであるという強い思いを示しました。
増田選手も王者としての自負を見せており、お互いのプライドが伝わる会見だったと感じています。
今回は、会見での発言をどう受け止めたか、前回の対戦から2人がどう成長したかを振り返りながら、試合の見どころと勝敗予想について書いていきます。
- 1. ベルトを持参した堤選手に感じたプライド
- 2. 王者としての思いと、挑戦者という立場
- 3. 増田選手にも、王者として譲れないものがある
- 4. 増田選手にとって、堤戦が特別な一戦である理由
- 5. 「くたびれた」という発言だけでは状態を判断できない
- 6. 強い気持ちを、冷静な試合運びにつなげる
- 7. 経験を重ね、強くなった2人の再戦
- 8. 増田選手の「3ラウンド以内」は実現するのか
- 9. 堤選手を倒し切るには、当てたあとの攻撃が重要
- 10. 堤選手は、打ち合い以外の選択肢も持っている
- 11. 勝敗を分ける距離と、カットへの懸念
- 12. 約11カ月ぶりの実戦で確認したいこと
- 13. 勝敗予想は、堤選手の判定勝ち
- 14. どちらが倒れる展開も考えられる
ベルトを持参した堤選手に感じたプライド
会見で最も印象に残ったのは、堤選手がベルトを持参したことです。
「自分がチャンピオンだ」という意思を示し、チャンピオン同士が対戦するような構図を作っていました。その姿に本当のプライドを感じ、すごくいいと思いました。
堤選手は、試合に負けて王座を失ったわけではありません。負傷による休養を経て王座を失い、今回は挑戦者として復帰します。
僕の記憶では、こうした例はあまりありません。極端に長い期間、試合から離れていたわけでもなく、これまでも年に1回しか試合をしないチャンピオンはいました。そのため、今回の王座剥奪には理不尽さを感じています。
堤選手は今回を自身の防衛戦と捉えていますが、僕も同じような感覚を持っています。正式な立場は挑戦者でも、堤選手を今もチャンピオンだと考えているファンは多いのではないでしょうか。
納得できない形で王座を失っても、自分はチャンピオンだという思いを持ち続ける。その姿勢は、かっこいいと思いました。
王者としての思いと、挑戦者という立場
王座を失った経緯に、納得できない気持ちや苛立ちがあっても不思議ではありません。
ただし、その感情によって試合中の冷静さを失うことは避けなければなりません。堤選手には王者としての強いプライドがあると思いますが、実際の試合では感情をコントロールして戦う必要があります。
また、自分をチャンピオンだと考えることと、正式な王者として試合に臨むことには違いがあります。
今回は引き分けなら増田選手の防衛となり、堤選手は王座を獲得できません。引き分けでもベルトを守れるという点では、王者である増田選手が有利です。
その立場の違いが心理的にどう影響するかは、選手によります。チャレンジャー精神を持っている方が力を発揮する選手もいるため、気持ちの面まで一概には判断できません。
増田選手にも、王者として譲れないものがある
堤選手のベルト持参について、増田選手は「そんなことをしなくていいのにな」という趣旨の発言をしています。
僕は今回の経緯を考えると、堤選手がベルトを持参するのは自然な行動だと感じました。その気持ちを酌んでもよかったのではないかと思います。
一方で、増田選手は堤選手への敬意も口にしています。相手を尊重する気持ちと、自分も王者として譲れないという思いがあるのでしょう。
僕自身には、堤選手が今もチャンピオンだという感覚があります。ただ、2人がそれぞれ王者としてのプライドを持っていることは、とてもいいことだと思います。
堤選手が王座を失った経緯と、増田選手が勝利して王者になったことも、同じ団体の中で起きている以上、簡単には切り離せません。
堤選手が休養王者になっていなければ、増田選手にこのタイミングで王座決定戦の機会が訪れたかは分かりません。堤選手の防衛戦に、増田選手が挑戦する形になっていた可能性もあります。
さまざまなタイミングが重なって、今回の形になったのだと思います。どちらかの選手が悪いという話ではありません。
その状況の中で、2人ともチャンピオンとしての自覚を持っている。それが今回の会見に表れていたと感じます。
増田選手にとって、堤戦が特別な一戦である理由
増田選手にとって、堤選手との再戦には大きな意味があると思います。
日本タイトルマッチで敗れた経験は、強く記憶に残っているはずです。雪辱を果たしたいという気持ちもあるでしょう。
さらに、増田選手が正式な世界王者である一方、堤選手は試合に負けずに王座を失っています。
そのため、増田選手が王者になっても、堤選手の存在を挙げる声は残ると思います。
堤選手を破れば、そうした声にも結果で答えることができます。王者として広く認められるうえでも、今回の対戦は増田選手にとって大きな節目になると考えています。
「くたびれた」という発言だけでは状態を判断できない
会見では、増田選手が堤選手の印象を「少しくたびれた」と表現し、堤選手が「くたびれるでしょう」と返したことも取り上げられました。
ただ、堤選手が何を指してそう答えたのか、どのような気持ちだったのかは、僕には分かりません。
精神的なことなのか、表情に出ていたものなのかも、外からは判断できません。
会見の時点では、試合まで1カ月以上ありました。その様子だけで、調子の良し悪しまで判断するのは難しいと思います。
僕が感じたのは、お互いにこの試合への思いが強いということです。2人のプライドは、はっきり伝わってきました。
会見での言葉は、観戦する人の気持ちにも影響します。
それを見て、どちらを応援するか決める人もいるでしょうし、試合への関心も高まるはずです。
僕自身も、ボクシングを始める頃、畑山さんと坂本さんの事前番組や会見を見て、試合に興味を持ちました。
今回も会見をきっかけに2人を知る人が増えれば、いいと思います。
なお、僕は現役時代、相手の発言を聞いて「絶対に負けたくない」と気持ちを高めるタイプではありませんでした。相手が何を言っていても、ほとんど気にしていませんでした。
強い気持ちを、冷静な試合運びにつなげる
今回の会見を受け、堤選手には「あなたがチャンピオンだ」という応援も届くと思います。
僕自身も、堤選手を応援する声は多いように感じています。
そうした声は、基本的には選手の力になるはずです。
ただし、今回は普段以上に「絶対に負けられない」という思いが強くなるでしょう。その気持ちが冷静さを失うほど高まると、かえってマイナスに働く可能性があります。
僕が担当するなら、気持ちを高めるだけでなく、その感情をどうコントロールするかを考えます。
やるべきことを実行し、勝利につなげる。そのための試合運びを作らなければなりません。
これは堤選手だけでなく、増田選手の陣営にも当てはまります。感情に引っ張られず、準備してきたことを遂行できる状態に整えることが重要だと思います。
経験を重ね、強くなった2人の再戦
前回の対戦は、増田選手にとってプロ4戦目でした。その後はキャリアを積み、苦戦も経験しながら世界王者になっています。
当時と比べると、かなり骨太なボクシングになっていると思います。
苦戦を乗り越えて勝つ経験は、ものすごく大切です。もともとパンチ力と決定力がある選手なので、経験を生かして冷静に勝ちに徹すれば、怖い相手になると感じます。
アマチュアからプロに転向した選手にとっては、8オンスのグローブや長いラウンド、激しい試合への慣れも重要です。
それらを経験しているかどうかで、ボクシングは大きく変わります。
もちろん、成長したのは増田選手だけではありません。
堤選手も、苦戦を勝ち抜き、ダウンを奪われても逆転するなど、さまざまな状況を乗り越えてきました。そうした経験は、「どのような展開でも乗り越えられる」という強い自信につながっていると思います。
今回は、お互いに一度対戦した経験があります。増田選手は堤選手の得意な展開を防ぐために、堤選手も増田選手の思いどおりに戦わせないために、対策を準備しているでしょう。
前回の勝ち方が、そのまま今回も通用するとは限りません。
準備した作戦を実際の相手にどう当てはめるか。どちらの対策が機能するかは、試合が始まるまで分からない部分です。
増田選手の「3ラウンド以内」は実現するのか
増田選手が序盤で堤選手を倒す可能性は、十分にあると思います。前半は増田選手にチャンスがあると見ています。
ただ、「3ラウンド以内」という言葉には、半分ほどパフォーマンスの意味もあるのではないかと感じました。
今回は「3」という数字に縁があるという話もあり、それに合わせた発言だった可能性もあります。
12回戦の世界戦で、3ラウンド以内の決着を口にするのは、比較的珍しいことです。
実際に早期決着を目指すなら、増田選手の強打を序盤に当てる必要があります。相手を倒せるパンチ力は持っています。
僕は、増田選手が自分から仕掛ける展開を想像しています。ただし、近距離で打ち合うというより、一定の距離を保ちながら、ロングレンジから左を打っていく形になるのではないでしょうか。
堤選手を倒し切るには、当てたあとの攻撃が重要
増田選手の左は強力ですが、堤選手は一発では倒れないと思います。
一発効かされても、そこから立て直してくる選手です。そのため、効かせたあとに攻撃をまとめ、倒し切る力が求められます。
一発で終わらせようとすると、力みや空回りにつながり、かえって当たらなくなることもあるでしょう。重要なのは、強打を当てることに加え、そのあとの攻撃を続けられるかどうかです。
ただし、倒そうとして前に出すぎれば、堤選手は増田選手を捕まえやすくなります。
反対に、増田選手が消極的になり、入ってくる相手を待つことに集中すると、堤選手がフェイントを使って迷わせてくると思います。
増田選手には、自分から試合を作り、パンチを当てる場面を生み出すことが必要になると考えています。
堤選手は、打ち合い以外の選択肢も持っている
増田選手が序盤から攻めてきた場合、堤選手がどう対応するかは作戦次第です。
迎え撃って自分の得意な攻防に巻き込むのか。それとも、無理に付き合わず、相手を空回りさせながら自分のペースで進めるのか。どちらを選ぶかは分かりません。
堤選手には激闘型のイメージがありますが、足を使って動くこともできます。オーソドックスでもサウスポーでも戦えるため、相手からすると読みにくい選手だと思います。
動きながら崩すのか、積極的に攻め込むのか。その選択も見どころです。
一方、堤選手が止まって狙いすぎると、増田選手に左を打つ機会を与えてしまいます。増田選手の方が射程距離は長いため、遠い位置から打たれる可能性があります。
距離を詰める際には、直線的になりすぎないことが重要です。頭をずらし、立つ位置を変えながら、増田選手のストレートの軌道から外れる必要があります。
勝敗を分ける距離と、カットへの懸念
増田選手が有利に進めやすいのは、ロングレンジでの攻防です。
遠い距離で戦う時間が長くなり、堤選手が近づこうとしても近づけない展開になれば、増田選手にとっては好ましい流れだと思います。
堤選手としては、増田選手の長い射程距離に付き合うより、フック系のパンチを使える距離で戦いたいでしょう。そこで相手を消耗させ、後半の勝負に持ち込みたいのではないかと考えています。
増田選手は近距離での攻防を減らし、堤選手は距離を縮めたい。どちらの得意な距離で戦う時間が長くなるかが、重要なポイントです。
もう一つ気になるのは、堤選手のカットです。
堤選手は試合中にカットすることがあるため、早い段階で出血すると、本人にとっては難しい展開になるのではないかと感じています。
約11カ月ぶりの実戦で確認したいこと
堤選手にとっては、約11カ月ぶりの試合となります。
短い間隔ではありませんが、けがによって1年ほど試合から離れることは、特別珍しいわけではありません。その点からも、今回の王座剥奪には理不尽さを感じます。
実戦から離れた影響として気になるのは、試合勘です。長いラウンドを戦う感覚や、試合に向けて気持ちを整える過程は、練習とは異なります。
特に、当日の緊張感をコントロールできるかどうかは重要です。メンタルの状態によっても、動きは変わります。
試合が始まったら、僕は「サイクロン」と呼ばれる連打に持ち込むまでの動きに注目します。その過程でしっかり動けているかが、状態を判断する一つの材料になると思います。
勝敗予想は、堤選手の判定勝ち
僕は、堤選手の判定勝ちを予想しています。
今回の試合に懸ける思いは、非常に強いはずです。一度勝っていることも自信につながっているでしょうし、「この試合だけは負けられない」という気持ちが、普段の堤選手をさらに強くするのではないかと考えています。
スタイルの相性を見ても、増田選手にとって堤選手は、得意なタイプではないように感じます。
もちろん、堤選手にとっても増田選手の左は脅威です。お互いに戦いにくさはあるでしょう。
それでも、堤選手には相手を自分の得意な攻防に巻き込む自信があると思います。後半にかけてその展開を作り、判定勝ちにつなげると予想しています。
どちらが倒れる展開も考えられる
判定勝ちを予想していますが、どちらかが倒れる展開も想像できます。
増田選手の左で堤選手が倒れる可能性も、堤選手の連打で増田選手が倒れる可能性もあります。堤選手にも、相手を倒せるパンチがあります。
また、増田選手は近い距離でも意外と強いと感じています。入ってくる堤選手を迎え撃つ場面では、激しい攻防が生まれるのではないでしょうか。
今回は、お互いの意地とプライドがぶつかる再戦です。会見を見て、試合への期待がさらに高まりました。
2人ともけがなく万全の状態に仕上げ、それぞれの力を発揮する試合を見せていただければと思います。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
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第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
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