こんにちは椎野です。
僕はボクシングトレーナーとして、これまで世界、東洋、日本において10人以上チャンピオンを輩出してきました。
僕の経験から言っても、目標を達成するためには、ただがむしゃらに努力するよりも、具体的なステップを持つことで実現する可能性は高くなると感じています。
今回は、そんな目標達成に向けた大切なポイントをいくつかご紹介していきます。
初めに言っておきますが、プロボクシングの世界においてチャンピオンになるという目標は簡単に達成できません。
今日はどSトレーナー椎野でいきたいと思いますが、日々の練習も工夫を持って取り組むことで、夢の実現に向けた土台を築く事ができると思うので、プロ選手はぜひ参考にしてみてください。
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- この記事を書いた人
- 元プロボクサー
- 世界ランキング最高7位
- 東洋太平洋タイトル獲得
20年以上のボクシングキャリアを活かし
- ボクシング特化型パーソナルトレーナー
- トレーナー育成講師
- プロ専門ボクシングトレーナー
として活動しています。
担当した選手がチャンピオンベルトを獲得した数は10本以上。勝率はプロボクシング界の中でもトップクラス。
ボクシング好きなあなたに役立つボクシング情報を発信していきます。
- 1. 目標を公表する
- 2. 目標設定と逆算
- 2.1. 世界チャンピオンになるための目標設定の仕方
- 2.1.1. 世界チャンピオンへの道:F1と同じ“マシン”を強化する重要性
- 2.2. ランカーの選手がチャンピオンクラスを目指すならディフェンス技術向上が必須
- 2.3. プロテスト合格を目標にしているならこれが最低条件
- 2.3.1. 選手生命は短い:ゴールを決め、時間を味方につけましょう
- 3. ライバルより練習する
- 3.1. 練習する時間をただ増やせば良いわけではない
- 3.1.1. プロボクサーの現実:限られた時間でスキルを磨く
- 3.2. 練習の質を効率よく上げるためにトレーナーがいる
- 3.3. 効率的に強くなるために:トレーナーの指導と選手の感覚を掛け合わせる
- 4. 継続する大切さ
- 4.1.1. ボクシング界のロールモデル:藤田選手の諦めない心が生んだ結果
- 4.1. 絶対に夢を叶えると言う強い信念を持つことが大事
- 5. 謙虚さが自己成長とサポートにつながる
- 5.1. 成功し続けるプロボクサーの条件:スポンサーの重要性と自らを律する力
- 5.2. 天才は気づけばチャンピオンに:そうでない人は本気で努力すべき
- 6. 自分で環境を作る
- 6.1. 元担当選手の吉田実代選手は、まさに良い例です。
- 6.1.1. 吉田実代選手が魅せた環境を自分で築き上げるボクサーの姿
- 7. 目標を叶えるために大切なこと:まとめ
目標を公表する
まず一つ目は、目標や夢を明確に公表することです。
本気で世界チャンピオンを目指してボクシングに取り組んでいるなら、「必ず世界チャンピオンになります」と堂々と宣言しましょう。
口に出すことで意識が変わり、自分に対するプレッシャーとなり、強い信念が生まれます。さらに、周りの人たちに言うことで彼らの見る目も変わり、多くの応援が背中を押してくれるようになります。
もし目標を口に出せないとしたら、それは自分がその目標を達成する自信がないからかもしれません。しかし、自信を持って「絶対に叶える」と言葉にすることで、それが努力の原動力となり、楽な方に逃げそうなときや最後の苦しい場面で自分を奮い立たせてくれるものとなります。
また、そんな姿を見て応援してくれる人たちは、より良いトレーニング環境を提供してくれることもあります。たとえば、サプリメントやトレーニングウェアを提供してくれたり、トレーニングに集中できるようにサポートしてくれたりします。
目標を公言することで、勝利につながる多くの要素が生まれるのです。
だからこそ、僕はぜひ目標を公表することをおすすめします。
目標設定と逆算
二つ目は、目標設定をしっかり行うこと。
最終目標を叶えるために、逆算して小さな目標をいくつか設定していくことで、今やるべきことが明確になって確実に近づいていけるからです。
世界チャンピオンになるための目標設定の仕方
ボクシングで「世界チャンピオンになる」という最終目標を持つなら、まずはA級ボクサー、そして日本チャンピオン、東洋太平洋(アジア)チャンピオンのように、逆算したところから段階を追って目標を設定します。
自分の今の立ち位置がC級ボクサーなら、まずはA級ボクサーになるために必要な体力、技術などをつけていかなければなりません。また、いつまでにA級になると言う期限を設けても良いと思います。
そうすると今、どんな練習をどのくらいやらなければならないか、どんな技術が必要かも見えてきます。チャンピオンになるような人がどんな練習をしているかを知ることも大切です。
例えば、アジアチャンピオンで世界を狙っていた選手は、走り込みに加えて普通のA級選手では3分の1しか耐えられないようなフィジカルトレもこなしていました。
世界チャンピオンへの道:F1と同じ“マシン”を強化する重要性
僕はよくボクシングの世界レベルを"F1"に例えています。
F1レースに出場するのにF1カーで出ないと勝負にならないように、世界で戦いたいなら世界で戦える体力、フィジカル、スタミナが最低限ないとスタートラインにも立てません。チャンピオンになりたいなら早いうちからフィジカルトレーニングを取り入れることをお勧めします。
ランカーの選手がチャンピオンクラスを目指すならディフェンス技術向上が必須
また、僕は、チャンピオンになりたいと選手に言われたら、打たれないボクシングを教え、ディフェンスと駆け引きの練習をします。どんなにフィジカルが強く打たれ強くてもです。
その理由は、日本チャンピオンまでは、撃ち合うスタイルが通用しても、そこから上は、打たれる選手が上に行けない世界だとわかっているからです。打たれる選手はトップに行く前に潰れてしまう。
トップアマを経験し、プロの世界にも精通する須佐勝明氏も「打たせず打つ」ことの重要性を語っているのでこちらの記事もぜひ参考にしてみてください↓
プロテスト合格を目標にしているならこれが最低条件
まだプロボクサーでないなら、まずはプロテストに合格することを目標に頑張っていると思います。
プロになりたいなら、まずは体力と構えや足運びなどの基礎をしっかり身につけ、頭で考えなくても自然と正しいフォームでパンチを繰り出すことができ、パンチを怖がらずにしっかりディフェンス(ガード)できるのが最低条件かなと思います。
今月はジャブの基礎を体に染み込ませる、次の月はストレートを正しく打ち込めるようにする、そんな感じで一歩一歩前進していくのがいいと思います。
選手生命は短い:ゴールを決め、時間を味方につけましょう
ボクシングはいつ選手生命が終わるかわからない厳しいスポーツなので、目標設定をして効率よく目標達成に近づいていくこともかなり重要です。
何歳までにどんな目標を達成するのかと言う感じで、時間設定を作ると、今何をしなければいけないのか、目標設定がしやすくなると思います。
ライバルより練習する
次に、日頃から意識してほしいことについてお話しします。それは「ライバルよりも練習すること」です。
当たり前ですが、ボクシングの世界チャンピオンを目指すなら、ライバルは数えきれないほど存在します。
自分が目指す位置にいるライバルが自分以上に努力しているのなら、今のままでは彼らに追いつくことはできません。ライバルを超えるためには、自分も量・質ともに高めた練習を積み重ねる必要があります。
練習する時間をただ増やせば良いわけではない
ただがむしゃらに練習量を増やせば強くなるかと言うとそうではないので注意が必要です。過度なトレーニングで筋肉を痛めたり、ダメージを蓄積した結果、試合本番に支障がでることもあります。
そこで、休むことも含めて自分の体のコンディションを整えることが重要になってきます。
質の良い練習を、適切な量、自分ができる最大限までやり続ける。
そんな風に自分の限界突破を繰り返すことで、ライバルを超えることができます。
プロボクサーの現実:限られた時間でスキルを磨く
残念ながら現在、プロボクサーはそれだけで食べていける人は一握りで、ほとんどのボクサーが仕事をしながらプロとして活動しています。そんな私生活との兼ね合いの中で、限りある練習時間にどれだけ自分のスキルを伸ばせるかを考えてみてください。
確保できる練習時間が少ない状態でライバルを上回るには、どれだけ考えて練習できるかが鍵となります。
練習の質を効率よく上げるためにトレーナーがいる
ライバルに本気で勝ちたいと考えているなら、トレーナーの指示をただ受け入れて練習するだけではいけません。
根拠のない練習はあなたの貴重な時間を無駄にし、その間に考えながら練習しているライバルたちは確実に前進しています。選手には、トレーナーの指示が「何のための指示なのか」をよく考え、納得した上で練習に取り組んでほしいと思います。
効率的に強くなるために:トレーナーの指導と選手の感覚を掛け合わせる
僕は、担当する選手ができる限り効率よくボクシングスキルを身につけられるように、対戦相手の分析や戦略を踏まえて練習内容をある程度決めて指導しています。たとえば、「今日の練習はサウスポーの選手のストレートをブロックできるようにする」と目標を定めれば、練習の方針も明確になりますよね。
このように、選手の傾向を客観的に見ながら、トレーニングの意味を共有し、着実にレベルアップできるようサポートすることが、僕の役割だと考えています。
ただし、提案はするものの、選手に合わない場合はすぐに方法や戦略を見直します。実際に動いているのは選手自身なので、選手がやりやすい方法を選んだほうが勝てるからです。
トレーナーは、あなたが強くなるための「手段」。そのため、トレーナーをどう活用するかが鍵になります。
なので個人的には、選手にはもっと自分の意見や感覚をしっかりと伝えてほしいと思っています。
(そのためには、トレーナーとして信頼関係を築き、話しやすい雰囲気を作ることが大切だと考え、僕も日々試行錯誤しています)
継続する大切さ
ライバルも自分も人間なので、途中で挫折や失敗があるのは当たり前ですが、そこで自分の目標や夢を諦めないでいられるかどうかが大切です。
全員が全勝で世界チャンピオンになると言うのはほぼ不可能なので(笑)一度負けたからと言って、自分は無理なんだと思う必要はありません。
例えば、最近のチャンピオンはキッズから始めている選手が多い中、20歳からボクシングを始めた藤田炎村は、アマチュア時代に多くの敗北を経験しながらも、格上の相手に挑戦し続けました。
ボクシング界のロールモデル:藤田選手の諦めない心が生んだ結果
そして、2023年4月26日、後楽園ホールで日本スーパーライト級1位のアオキ・クリスチャーノと日本スーパーライト級王座決定戦を行い、2回8秒でKO勝ちし、日本王座を獲得しています。
諦めずに継続した結果、チャンピオンの座に上り詰めています。
「諦めずに努力し成果を成し遂げる」と言う意味で藤田選手はボクサーとして良いロールモデルなんじゃないかと思っているので、気になる方はぜひ藤田選手の活動を見てみてください。
絶対に夢を叶えると言う強い信念を持つことが大事
どんなに回り道をしても、「絶対にチャンピオンになる」「夢を叶える」そういう強い信念や覚悟がある人は、誰よりも自分を信じて努力し続けられるので世界チャンピオンになれます。
これはボクシング以外でも仕事でもなんでもそうですが。
絶対に自分は成功するという信念がある人が自分の夢を叶えられると思います。
謙虚さが自己成長とサポートにつながる
本当の天才でない限り、ボクシングという厳しい世界を這い上がっていくために努力は欠かせません。
世界チャンピオンを目指している選手が「目標としていたライバルに勝った」「あの人からダウンを奪った」そんな成功体験持ったとき、不思議なことに【自分は才能がある特別な存在だ】と勘違いして努力をやめてしまう人と【まだ上には上がいる】と努力を重ねていける人に分かれていきます。
まだ世界チャンピオンになっていないのに【自分は天才なんだ】と思う人が、同じレベルで上を目指して努力し続けるライバルに打ち負かされる未来は容易に想像できますよね。
本当に夢を叶えたいのなら、常に謙虚な姿勢を持ち、「まだ成長の余地がある」と考えながら日々練習に取り組んでください。そうすることで改善点を見出していけたり、トレーニングの精度を上げていくことができます。
成功し続けるプロボクサーの条件:スポンサーの重要性と自らを律する力
また、先述した通り、プロボクサーだけで生計を立てられる人はほんの一握りであり、スポンサーの存在が非常に重要です。いくらチャンピオンになったとしても、努力をやめた選手を応援したいと思う人は少ないでしょう。
実際に、自分の実力を過信して遊びにふけり、スポンサーを失って仕事を増やさなければならなくなった結果、ライバルに差をつけられて引退してしまった選手を知っています。
天才は気づけばチャンピオンに:そうでない人は本気で努力すべき
ちなみに、天才と呼ばれる人は、気づけば自然とチャンピオンになっているものです。
「気づいたらチャンピオンになっていた」という状態でない人は、自分を天才だと思わないでください。
自分で環境を作る
練習は量も大切ですが、同時に質も意識して取り組むことが重要です。そして、そのためには環境が大きな役割を果たします。
環境というのは自分で作っていくものです。もし周りの環境が整っていない場合は、自分自身で工夫し、環境を整える必要があります。自分にとって効果的だと感じる練習を、誰かに「ダメ」と言われて諦めていては、理想の環境づくりは難しいでしょう。
元担当選手の吉田実代選手は、まさに良い例です。
彼女は子育てとトレーニングを両立させるために、私生活を鑑みた上でアメリカ移住を決断し、その結果、ビッグマッチを実現しました。超人気選手エバニー・ブリッジスとの対戦にも勝利しています。
そして、初防衛戦は2024年10月23日にマディソン・スクエア・ガーデンのザ・シアターでメインイベントとして行われ、1年前に敗れたシュレッター・メトカーフと対戦しましたが、0-3の判定で惜しくも敗れ初防衛はなりませんでした。
吉田実代選手が魅せた環境を自分で築き上げるボクサーの姿
しかし、このような大舞台でのマッチメイクを実現し、勝利を確信させるような素晴らしい試合を見せた吉田選手は、「自分の環境は自分で作る」を体現したボクサーの代表といえるでしょう。
自分の夢を叶えるための最良の環境を、自分自身でなんとしてでも作り上げる。そんな姿勢で日々を過ごしてほしいと思います。
目標を叶えるために大切なこと:まとめ
目標達成のために大切なことを以下にまとめます。
- 目標の公表
目標や夢を口に出して公表することで、自分へのプレッシャーや強い動機となり、周囲からの応援やサポートを得られる。 - 目標設定と逆算
最終目標を設定し、それに向かって小さな目標を逆算して立てる。時間設定を設けることで、やるべきことが明確になる。 - ライバルより練習する
ライバルを意識し、量や質で上回る練習を重ねることが重要。挫折しても目標を諦めずに、強い信念を持ち続けることが成功につながる。 - 謙虚さを持つ
自分に成長の余地があると考え、常に謙虚な姿勢で努力し続けることが大切。天才でなくとも努力で成し遂げられることがある。 - 自分で環境を作る
効率的な練習には良い環境が不可欠であり、環境は自分で整えるもの。周りが整っていない場合でも、自ら工夫して最良の環境を作り出す姿勢が必要。
あなたの目指す目標は、簡単には手が届かないものかもしれません。
しかし、本当に叶えたいと思っているなら、目標を口に出し、それを叶えるための具体的な道筋を描き、他の誰よりも努力を重ねることが重要です。そして、自分の限界を決めつけず、成長し続けるために日々の積み重ねを怠らず、謙虚な姿勢を持ち続けましょう。
あなたの夢を叶えるための環境は、自分自身で築き上げるものです。他人任せではなく、自分に必要なサポートや環境を整え、必ず目標に向かって歩み続けてください。負けても、挫折しても、そこから立ち上がる強い信念を持つ人こそ本当のチャンピオンになれます。
夢に向かって突き進む姿が、周りの応援を呼び込み、必ず道を切り開きます。一日一日の努力を大切に、目標に向かって全力で成長を続けていきましょう。
というわけで今回は以上です。