
井上尚弥選手との大一番を終えた中谷潤人選手が、試合後に左眼窩底骨折と診断されました。
試合直後の応急的な検査では分からず、翌日に改めて専門医の検査を受けて判明したということです。
試合中、右アッパーを受けた場面で中谷選手が目をつむるようなシーンもありました。
眼窩底骨折という怪我は、ボクサーにとってどれほど大きな影響があるものなのでしょうか。
今回は、元プロボクサーであり、自身も眼窩底骨折を経験しているボクシングトレーナー椎野大輝が、
試合中の影響、井上尚弥選手のパンチ、そして中谷潤人選手の今後について話しました。
僕自身も経験した眼窩底骨折

僕も現役時代に、眼窩底骨折を経験しています。
岩佐亮佑選手との試合で左ストレートを受けて、試合後にCTを撮ったところ、左目の内側と下の骨が折れていることが分かりました。
眼窩底骨折というのは、眼球の周りにある骨が折れる怪我です。
特に多いのは、目の下にある「眼窩底」と呼ばれる部分の骨折です。
この部分が折れると、目の位置がずれたり、視界に影響が出たりします。
実際に自分が経験した感覚で言うと、両目の見え方がずれるので、かなり見えにくくなります。
場所によっては、めちゃくちゃ痛いです。
痛みの強さは、折れた場所によって変わります。
神経に近い場所であれば強い痛みが出ることもありますし、パンチを受けるたびに頭の奥まで響くような感覚になります。
僕の場合も、目の周りにパンチをもらうと、脳みそを殴られるような感じで響いていました。
試合直後に分からないこともあります

今回、中谷選手は試合直後の検査では診断がつかず、翌日に専門医の検査で眼窩底骨折が判明したということです。
僕自身も、試合直後にその場で確定したわけではなく、検査を受けて分かりました。
ただ、僕は大学時代にも眼窩底骨折を経験していたので、試合後には「これは眼窩底をやったな」と感じました。
ボクサーは、試合直後に痛みがあっても表情に出さず、インタビューや会見に対応することがあります。
中谷選手も、左目に不調がありながら会見に出ていました。
あれは、プロボクサーとしての仕事というか、少しでも話せることを話そうという気持ちがあったのかなと思います。
ただ、痛かったと思います。
眼窩底骨折は、場所によっては本当に痛いです。
僕が担当していた選手でも、試合後のインタビュー中は我慢していて、終わったあとに「痛い、痛い」となって、病院に行ったら折れていたということがありました。
だから、ボクサーは痛くても我慢するんです。
インタビュー中は、できるだけ表に出さないようにする。
中谷選手も表情を大きく変えずに対応していましたけど、相当痛かったと思います。
右アッパーを受けたあとに変化が見えました

試合を振り返ると、前半は井上選手が技術戦でリードしていました。
一方で、中谷選手は8ラウンドあたりから前に出て、追い上げる場面を作っていました。
その中で、11ラウンドに井上選手の右アッパーが入った場面があります。
僕は、眼窩底骨折につながったパンチは、この右アッパーだったのではないかと思っています。
あの右アッパーを受けた時に、中谷選手が明らかに目を痛がるような素振りを見せたんですよね。
なので、眼窩底はあのパンチだったのかなと感じました。
目を負傷すると、視界だけでなく距離感にも影響が出ます。
ボクシングでは、相手との距離を正確に測ることがすごく大事です。
その距離感が狂うと、パンチを避けることも、打ち返すことも難しくなります。
目の負傷で一番きついのは、僕は距離感が分からなくなることだと思います。
両目の見え方がずれるので、相手との距離が分かりにくくなるんです。
それでも12ラウンドまで戦い切った中谷選手はすごいです

中谷選手は負傷しながらも、最後まで戦い抜きました。
眼窩底骨折の状態で12ラウンドまで戦ったことについては、まず中谷選手の我慢強さを評価したいです。
そして、井上選手についても印象的だったことがあります。
井上選手は試合後、相手が怪我をしたことは分かったけど、そこを叩きのめす気にはならなかったというような発言をしていました。
本来、ボクシングでは相手が弱った部分を攻めることは常套手段です。
でも、井上選手はあえてそこを狙わなかった。
そこに、井上選手の余裕も感じましたし、中谷選手へのリスペクトも感じました。
耐えた中谷選手もすごいですし、井上尚弥選手のスポーツマンシップも感じました。
ただ、今後さらに階級を上げて強豪と戦う場合に、その優しさが甘さとして出なければいいなとは思います。
でも、今回の試合に関しては、あえてそこを狙わなかったというところに、井上選手のかっこよさを感じました。
井上尚弥選手のパンチは当たりどころも怖い

中谷選手は試合後、負傷について「パンチによるものだと思います」と話していました。
今回の右アッパーに関しては、狙って眼窩底を折るようなパンチではなく、当たりどころが悪かったのではないかと思います。
ただ、井上選手の怖さは、単にパンチが強いことだけではありません。
相手が前に出た瞬間。
バランスが崩れた瞬間。
打ち終わりの隙。
そういった一瞬に、正確にパンチを合わせられるところが井上選手の強さです。
崩れたところにパンチをもらうと、受ける側は思い切って前に出にくくなります。
少しでも隙を見せると、そこを狙われる。
ただ、これはお互い様でもあります。
中谷選手も井上選手の打ち終わりを狙っていましたし、トップレベルになると、そういう隙の取り合いになります。
井上尚弥選手の余裕に驚き

今回の試合で僕が特に驚いたのは、井上選手の試合中の余裕です。
試合中盤、8ラウンドから10ラウンドあたりで、中谷選手が前に出始めた場面がありました。
見ている側からすると、井上選手が少し疲れたのかな、流れが変わるのかなと感じる場面でもありました。
でも、試合後の井上選手のコメントを見ると、あの時間帯はポイントを取られてもいいくらいの感覚だったようです。
それを聞いて、正直かなり驚きました。
「そんな余裕あるの?」と思いました。
前半でポイントを取れている。
中谷選手のパンチを受けても倒されない感覚がある。
だから数ラウンド取られても問題ない。
そう判断して戦っていたとすれば、本当にすごいです。
井上選手の経験値と試合運びのうまさを感じました。
中谷選手はKOパンチャーです。
その選手を相手に、そこまで冷静に試合を進められるというのは、簡単なことではありません。
井上選手はこれまでにも、ネリ選手のようなハードパンチャーとも戦ってきています。
そういった強打者との試合経験も、今回の余裕につながっていたのかなと思います。
キャリアも武器です。
ハードパンチャーとの試合を経験しているというのは、かなり大きなアドバンテージだったと思います。
復帰に向けて一番大事なのは完治させること

中谷選手はSNSで、「しっかり治してまた戦います」と投稿していました。
こうした目の怪我のあとに一番大事なのは、まず完治させることです。
中途半端に治して練習を再開すると、悪化したり、後遺症が残ったりする可能性があります。
眼窩底骨折では、目の動きが悪くなったり、物が二重に見える複視が残ったりすることもあります。
僕自身も、左上を見る時に少し複視が残っています。
だからこそ、中谷選手には無理をせず、まずはしっかり治してほしいです。
手術が必要なのか、自然治癒でいくのかは症状によると思います。
いずれにしても、焦らず治すことが最優先です。
中谷選手はスーパーバンタム級に上げて、まだ2戦目です。
体を階級に適応させていく時間も必要だと思いますし、まずは怪我を完治させることが大事だと思います。
目を打たれる恐怖心をボクサーは忘れる

目の負傷は、体だけでなくメンタルにも影響することがあります。
僕自身も、復帰直後は目を打たれることへの恐怖心が少しありました。
ただ、ボクサーは良い意味で、その恐怖を忘れていきます。
ボクサーって、やっぱりちょっとぶっ飛んでいる選手が多いんです。
中谷選手も大丈夫だと思います。
これまでの戦いぶりを見ても、復帰後に大きく引きずるタイプではないのではないかと思います。
怪我は言い訳にはならない

今回、中谷選手が眼窩底骨折していたことで、「怪我がなければ結果は変わったのではないか」という見方も出るかもしれません。
ただ、僕は怪我は言い訳にはならないと思います。
ボクシングは殴り合いの競技です。
試合中に怪我をするリスクは、お互いにあります。
井上選手も、ドネア戦で眼窩底骨折をしながら勝っています。
中谷選手自身も、怪我を言い訳にはしていません。
だから、怪我があったから負けたというよりも、怪我をしても倒されずに最後まで戦い切った中谷選手を評価すべきだと思います。
もちろん、怪我がなかったらどうなっていたかというのは、たらればになってしまいます。
ただ、実際には11ラウンドで怪我をして、それでも12ラウンドまで戦い切りました。
そこは本当にすごいところだと思います。
中谷潤人選手の評価は下がっていない

今回、中谷選手は井上選手に判定で敗れました。
それでも、中谷選手の評価は下がっていないと思います。
むしろ僕の中では評価は上がりました。
井上尚弥選手という世界最高峰の選手を相手に、後半に前へ出て、クリーンヒットを奪う場面も作りました。
そして、負傷しながらも最後まで戦い抜きました。
試合後に選手やトレーナーと話しても、「中谷選手は強かったね」という声が多かったです。
だから、この敗戦だけで中谷選手の評価が下がることはないと思います。
敗戦だけでは語れない内容だったと思います。
まとめ

中谷潤人選手は、井上尚弥選手との試合中に眼窩底骨折を負いながら、12ラウンドを戦い抜きました。
目の負傷は、視界や距離感に影響する非常に難しい怪我です。
それでも中谷選手は最後まで倒されず、井上選手に食らいつきました。
一方で、井上選手のパンチの正確さ、試合中の余裕、そして相手を必要以上に痛めつけない姿勢も印象的でした。
今回の敗戦で、中谷選手の評価が下がったわけではないと思います。
むしろ、スーパーバンタム級でも世界トップで戦える力を見せた試合だったと思います。
まずはしっかり怪我を治して、また強い中谷潤人選手の姿を見せてほしいです。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
元プロボクサー
世界ランキング最高7位
第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
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