
5月2日、東京ドームで行われた井上尚弥選手と中谷潤人選手の一戦は、井上選手が3対0の判定で勝利しました。
採点は116対112が2者、115対113が1者。
試合後、井上選手自身も「2ポイント差は厳しいなと思う」と語り、自分の試合中の感覚や映像を見直した感覚とは、ジャッジの採点に少しズレがあったことを口にしました。
では、この採点はどう見るべきなのか。
今回は、元プロボクサーであり現役トレーナーの椎野大輝が、井上尚弥選手と中谷潤人選手の試合における採点、主導権、ジャッジとの感覚のズレ、そして今後の井上選手に必要になるポイントについて語りました。
- 1. 115-113はかなり厳しい採点だった
- 2. 選手の感覚とジャッジの採点がズレることはある
- 3. 井上尚弥がポイントを取っていた部分
- 4. ギリギリで避けるのはトップ選手の技術
- 5. 中谷潤人のクリーンヒットは多くなかった
- 6. 中谷潤人に入ったラウンドはどこだったのか
- 7. 前に出る印象が評価された可能性
- 8. リーチ差を踏み込みとスピードで埋めていた
- 9. セコンドは自分の選手を厳しめに見る必要がある
- 10. 選手に採点状況をどう伝えるべきか
- 11. 井上尚弥はやりたいことをやっていた
- 12. フェザー級に上げた時に採点の重要性は増す
- 13. 強い選手ほど、まだ上を見ている
- 14. 中谷潤人の強さも出た試合だった
115-113はかなり厳しい採点だった

僕は、117対111ぐらいかなと思いました。
中谷選手が取ったかなというラウンドが、3ラウンドぐらいはあったかなと思って見ていました。
なので、115対113と聞いた時は、「それはきついな」と思いました。
もちろん、井上選手の勝ちは文句ないです。絶対に井上選手の負けはなかったと思います。
井上選手自身も「厳しいな」と言っていましたけど、僕も117対111ぐらいかなと思っていたので、中谷選手に取ったとしても3ラウンドぐらいかなという見方です。
中盤以降、井上選手が少し抜いた場面というか、ポイントを取られてもおかしくないラウンドがあったとは思います。
基本的には、井上選手が主導権を握っていたと思います。
ヒット数だけを見ると、大差はなかったかもしれませんが、
試合を作って、主導権を握っていたのは、基本的にはずっと井上尚弥選手だったと思います。
お互いに大きなダメージがない状態だった場合、そういう試合の作り方や主導権の部分で採点がつくと思います。
選手の感覚とジャッジの採点がズレることはある

ボクシングの採点で、選手の感覚とジャッジの感覚がズレることはあります。
今回の試合は、特に中盤まではお互いに大きなダメージが少なかったので、採点が難しかったのかなという部分はあります。
ただ、僕の中では迷わず井上選手のラウンドだと思う場面が多かったです。
「このラウンドはどっちかな」と迷うラウンドは、そこまで多くなかった印象です。
井上尚弥がポイントを取っていた部分

今回の試合で大きかったのは、井上選手が試合を作っていたことです。
中谷選手は、井上選手に合わせていたように見えました。
どちらが試合を作っていたかと言えば、井上選手だったと思います。
ジャブもしっかり当てていました。
あとでヒット数をカウントしているものを見ても、井上選手の方が当てていたと思います。
ただ、お互いに大きなダメージではなかったんですよね。
では、どこで中谷選手にポイントが流れていたのか。
もしかしたらですが、井上選手の避け方が派手に見えた部分があったのかもしれません。
井上選手は、パンチをギリギリで避ける場面がありました。
そういう動きが、見栄えとしてどう見られたのかは分かりません。
一方で、中谷選手はパンチを思い切り振るので、見栄えがあります。
井上選手は身体能力を生かして避けたりもするので、それが崩れているように見えるのかどうか。
そのあたりは分かりませんが、僕の中では115対113という感じではありませんでした。
ギリギリで避けるのはトップ選手の技術

試合中のスローモーションでも流れていましたが、井上選手は本当にギリギリで避けていました。
世界のトップクラスの選手、例えばシャクール・スティーブンソンなども、本当に鼻先をかすめるくらいギリギリで避けます。
大きく避けても、ギリギリで避けても、当たっていなければ同じです。
ただ、ギリギリで避けた方が反撃はしやすいです。
反撃も早くなります。
上のレベルになってくると、できるだけ避けるモーションは小さくなります。
大きく動いて避けるのではなく、ギリギリで避けるんです。
今回は、そういう差もあったと思います。
井上選手が先に仕掛けて、中谷選手が打ち返すような形がありました。
井上選手が少し突っ込むと、中谷選手の打ち返しはギリギリになる。
それでも、井上選手には届いていなかったと思います。
中谷潤人のクリーンヒットは多くなかった

井上選手は、差が詰まっているジャッジもいたので、どういう部分を優勢と見てポイントに加えたのか知りたいという趣旨の話をしていました。
僕も、どこでポイントをつけたのかなとは思いました。
井上選手のジャブ、ボディ、ボディジャブ、ストレートのボディ。そういったポイントの方が、僕は優勢だったと思います。
中谷選手のクリーンヒットは、そこまで多くなかったと思います。
井上選手はブロックしていましたし、外からの右フックが少し入った場面はありました。
ただ、基本的には井上選手が試合を作っていました。
主導権はずっと井上選手にあったのではないかと思います。
だから、そのラウンドは基本的に井上選手が取っているのではないかと、僕は思って見ていました。
中谷潤人に入ったラウンドはどこだったのか

ジャッジペーパーを見ると、5ラウンド、6ラウンドを中谷選手につけているジャッジがいました。
ここは見直さないと正確には言えませんが、僕は6ラウンドまではほぼ井上選手かなと思っていました。
一人のジャッジは、7ラウンドまで井上選手のフルマークでした。
そこから8、9、10ラウンドを中谷選手が取って、11ラウンドを井上選手、ラストを中谷選手につけていました。
ただ、僕はラストも井上選手だと思いました。
僕の採点では117対111です。
7ラウンドまで全部井上選手で、11ラウンドと12ラウンドも井上選手という見方です。
なので、ここは見方の違いだと思います。
中盤のラウンドを中谷選手につけているジャッジがいました。
7ラウンドも一人は中谷選手につけています。
そのあたりは、中谷選手が少しずつ前に出始めていた時間帯でもありました。
そこを見て、中谷選手にポイントが入ったのかなと思います。
前に出る印象が評価された可能性

中盤から中谷選手がプレッシャーをかけ始めました。
見方によっては、前に出ている選手の印象が評価されることもあります。
アグレッシブという部分です。
どれだけ積極的に戦っているかも、採点基準の一つに入っています。
ただ、それでも中谷選手がクリーンヒットを取れていたかというと、そうではなかったと思います。
基本的には、井上選手がブロックして、足で外していました。
それがポイントになるのか、という感じはあります。
ただ、展開が少し変わりつつあったので、もしかしたら中谷選手がペースを握り始めたように見えたのかもしれません。
お互いに大きなダメージがなかったので、そこが難しいところです。
ダメージがあれば分かりやすいです。
採点は、ダメージが最優先ですからね。
リーチ差を踏み込みとスピードで埋めていた

井上選手のパンチは届いていて、中谷選手のパンチはなかなか届いていなかった。
僕もそういう印象でした。
井上選手が試合を作っていました。
リーチは中谷選手の方が長いです。
ただ、井上選手はそのリーチの差を、踏み込みの速さとスピードで埋めるんですよね。
あとはフェイントや駆け引きです。
だから中谷選手は、自分の懐の深さやリーチの長さを活かしきれなかったのかなと思います。
もちろん、懐が深い分、井上選手が少し突っ込みやすくなって、終わり際が甘くなる部分はありました。
ただ、そこを狙うにしても、井上選手が速すぎました。
中谷選手が少し間に合っていなかったという印象です。
僕はやっぱり、完全に井上選手の主導権だったと思います。
セコンドは自分の選手を厳しめに見る必要がある

井上選手は今回で判定勝ちが3試合続いています。
その中で、技術を見直すだけではなく、試合中に自分とセコンドの採点感覚がズレないようにする必要があると話していました。
「取っているだろう」と思っていても、実際には取られていることはよくあります。
やはり、自分の選手をひいき目に見てしまうことがあるんですよね。
だから、「これ取れているかな?」というラウンドは、相手につけるぐらい、少し厳しめに見ておいた方がいいと思います。
僕は最近、セコンドにつく時はそういう感じで見ています。
自分の選手に少し厳しめにポイントをつけるようにしています。
自分がやっている感覚。
セコンドが見ている感覚。
第三者目線での感覚。
これが必要だと思います。
セコンドがそれをできればいいのですが、どうしても自分の選手はひいき目に見やすいです。
そこが難しいところです。
今後、井上選手がフェザー級に上げて、より倒すことが難しくなってきた時には、採点の正確さも求められると思います。
ただ、難しいですよね。
どうしても感情が出てきてしまうところはあります。
選手に採点状況をどう伝えるべきか

セコンドが試合中に選手へ採点状況をどう伝えるか。
「取っているよ」と伝えるのも一つです。
ただ、「取っているよ」と言うと油断する選手もいるので、そこは選手の性格に合わせないといけません。
焦らせた方がいい選手もいます。
取れていたとしても、「これは取れているか分からないから、もう少ししっかり手を出そう」「手数を増やそう」「しっかり攻めよう」と言った方がいい選手もいます。
逆に、「ポイントは取れているから、油断せずにやろう」と落ち着かせた方がいい選手もいます。
これは選手によります。
ただ、試合中の採点は、感情を出さずに客観的に見られる人をそばに置くのがいいと思います。
サブセコンドの一人でもいいと思います。
セコンドが3人いるなら、一人は完全にジャッジの代わりとして見てもらう。
「少し厳しめに見てくれ」という感じで採点してもらってもいいと思います。
今回の試合はオープンスコアではありませんでした。
井上拓真選手の試合のようにオープンスコアであれば、分かりやすいですし、把握もしやすいです。
ただ、すべての試合がそうではありません。
そうなってきた時に、採点をより正確に読める人がいるといいと思います。
井上尚弥はやりたいことをやっていた

今回、井上選手はおそらく、陣営も含めてやりたいことをやっていたと思います。
前半から中盤までしっかりポイントを取って、8、9、10ラウンドあたりは少し抜くというか、そういうラウンドを作った。
それも井上選手が「こういうラウンドにしよう」と思ってやっていたと。
完全にポイント計算をして、やりたいことができているから、その流れで進めていた。
でも、そのポイントの見方が実際の採点とズレていた。
そこは怖いところです。
もっとズレていたら危ないです。
もっと接戦だったら、さらに危ないですからね。
フェザー級に上げた時に採点の重要性は増す

今後の井上尚弥選手にとって大事になってくるのは、フェザー級に上げた時だと思います。
フェザー級に上げた時、相手が人気のある選手だった場合、アメリカで試合をするとなれば、ジャッジの見え方も少し変わってくると思います。
例えば、ブルース・キャリントン選手やラファエル・エスピノサ選手のような選手とアメリカで試合をする場合です。
今回は東京ドームでの試合でした。
ホームでの試合だったので、井上選手への応援はものすごかったと思います。
でも、アメリカで試合をする場合、相手側への声援が大きくなる可能性もあります。
相手の選手が攻撃した時に、会場が盛り上がる。
もちろん井上選手もアメリカで人気があると思うので、そこは分かりません。
ただ、そうなった時に、印象点のようなものも出てくると思います。
こちらが勝っていたとしても、相手への声援によって、相手が優勢に見えてしまうこともあります。
だからこそ、ポイントの計算ミスというか、より明確にラウンドを取ることが必要になると思います。
ただ、今回は井上選手が取っていたと思うので、難しいところではあります。
それでも、今後の課題としてそこを口にしているところが、井上尚弥選手らしいなと思いました。
完璧主義というか、もっと上を見ている。先を見ている感じです。
次はもっと完璧に勝つ。
この点差では納得していないということだと思います。
115対113ということは、あと1ラウンドどこかを取られていたらドローです。
それは自分でも納得いっていないのかなと思います。
あの試合でドローと言われたら、確かに納得できないです。
そういう意見が大半だと思います。
その中でも、自分の課題としてちゃんと見据えている。
そこがすごいところだと思います。
強い選手ほど、まだ上を見ている

井上尚弥選手のような選手のすごいところは、あれだけ強くても、まだ上を見ているところです。
「自分はまだ強くなる」
「まだ満足していない」
そういう強さへの貪欲さがあります。
見ている高みが高すぎるんですよね。
それは、それだけの練習をしているからというのもあると思います。
そこは見習うべきところだと思います。
例えば、日本チャンピオンになりたいという目標があるとします。
「日本チャンピオンになりたいな」と思っている選手は、基本的にはなれないと思います。
もっと断固たる決意というか、スラムダンクではないですけど、断固たる決意です。
そこがすごく大事だと思います。
目標を高く設定している。
もっと高いところを見ている。
その上で、それに見合った練習をしている。
だから自信を持って口にできるんです。
「日本チャンピオンになりたいな」と思っている人は、日本チャンピオンになるための練習を、基本的にはしていないと思います。
だから、自信を持って目標を口にできない。
それだけ自信もないということだと思います。
目標があるなら、それを絶対に達成するという決意。
覚悟。
執念。
目標がある人には、それが大事だと思います。
中谷潤人の強さも出た試合だった

今回は、井上選手が採点について、自分がやっている感覚よりも意外と僅差だったと感じていました。
僕もそれは思いましたし、見ていた人の多くもそう感じたのではないかと思います。
ただ、それだけ中谷選手の見栄えというか、一方的にやられないところも、中谷選手の強さだったと思います。
この試合を経て、井上選手はさらに強くなると思います。
より完璧な勝ち方を目指して作ってくると思います。
そうなったら、もう誰が勝てるんだという感じになってしまいます。
でも、井上選手にはそこまで行ってほしいです。
フェザー級でも無双して、日本ボクシング界をさらに盛り上げてほしいと思っています。
頑張っていただきたいです。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
元プロボクサー
世界ランキング最高7位
第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
分析と戦略を丁寧に行い、完全カスタマイズされた指導法、機能解剖学を活かした根拠ある指導法を基に、勝利に直結する唯一無二のボクシングを提供しています。
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