
こんにちは、ボクシングトレーナー椎野大輝です。
井上尚弥選手との一戦でプロ初黒星を喫し、左眼窩底骨折の手術を受けた中谷潤人選手が、地元・相模原で再起報告会を行いました。
中谷選手は井上戦について「日を追うごとに課題がたくさん見つかった」と振り返り、再び世界王者、そしてパウンド・フォー・パウンド1位を目指すと宣言しています。
さらに、現在PFP1位にいる井上選手を見据え、「周りの人、そして井上選手も振り向いてくれるようなファイトをしていくことが一番近道」と語りました。
中谷選手は今後、どのような課題に取り組む必要があるのか。そして、井上選手との再戦やPFP1位への現実的な道筋はどこにあるのか。
今回は、中谷選手の再起報告会での発言をもとに、トレーナー目線で解説します。
怪我が治り、前を向いたことが嬉しい

中谷選手は井上戦を振り返り、「日を追うごとに反省点や課題がたくさん見つかった」と話していました。
この発言からは、怪我が治り、すでに前を向いていることが伝わってきます。
僕としては嬉しいですし、中谷選手は日本のボクシング界において非常に大きな存在です。しっかり怪我を治し、次の再起に向けて前を向いたことは、嬉しい知らせだと思います。
井上選手と戦って負けた以上、課題は当然見つかるものだと思います。これは勝った場合も負けた場合も同じです。
大切なのは、見つかった課題を克服し、次の試合ではさらに強くなることです。
課題を乗り越え、以前よりも強くなった中谷潤人選手を見られるのではないかという意味で、今後が楽しみです。
課題をどのように捉えるかは、中谷選手本人だけでなく、トレーナーや陣営の考えも関係します。
チームでしっかり話し合い、課題を克服しながら長所をさらに伸ばしていく。その過程によって、チームとしての結束もより高まるのではないかと思います。
井上戦での大きな課題は前半の試合運び

井上戦で一番大きかった課題は、前半ではないでしょうか。
僕は、前半に井上選手が試合を作ったことが、井上選手へポイントが流れた要因だと思っています。
もう一度井上選手と戦うのであれば、中谷選手が自分から試合を作ることが課題になると思います。
井上選手を相手に試合を作るのは、かなり難しいことです。しかし、それをしなければ前半のポイントは取れないと思います。
この課題を短期間で改善するのは難しいでしょう。
ただし、すでに基礎がしっかりできていて、戦い方を少し変えるだけであれば、その動きを実戦練習で体に染み込ませていくことになります。
ボクシングは相手がいる競技です。当然、相手も次の試合に向けて改善してきます。
こちらが対策をしたからといって、必ずうまくいくとは限りません。実際に戦ってみなければ分からない部分もあります。
年内に試合をしない期間をどう使うべきか

中谷選手は年内に試合を行わない方針を示しています。
怪我が治りかけている段階だと思うので、今は実戦練習よりも、これから上の階級で戦うための体作りを優先できる時期だと思います。
今後はスーパーバンタム級、あるいはフェザー級で戦っていく可能性があります。
上の階級で戦うのであれば、その階級に対応できる体を作る必要があります。
試合が決まっていなければ減量もなく、特定の相手への対策をする必要もありません。その分、自分自身のレベルアップに時間を使えます。
この期間に基礎レベルを上げることができると思います。
フィジカルトレーニングによって体が強くなれば、これまで身につけてきた技術のレベルも一段上がります。
そうなれば、次の実戦では、さらにレベルアップした中谷選手を見られるのではないでしょうか。
怪我からの復帰では土台作りが重要

手術を受けて練習を再開する場合は、まず怪我に注意しながら進めていくことになります。
今回の怪我は眼窩底骨折なので、目の動きや見え方にも注意が必要だと思います。
1か月ほど練習を休んだ後、いきなり厳しい練習をすると、別の怪我をする可能性があります。
そのため、まずは基礎的な部分から段階的に上げていくことが大切です。
基礎トレーニングを行い、怪我の回復具合を確認しながら、徐々に応用的なトレーニングへ移っていく。そこからフィジカルトレーニングの強度も上げていく流れになると思います。
今は基礎作り、土台作りの時期ではないでしょうか。
休んだことで落ちた部分を戻しながら、怪我に注意して進めていくことが重要です。
一般的には、休んだ期間の倍や3倍ほど、元の状態に戻すための時間が必要だと言われます。
例えば1か月休んだ場合、元のコンディションに戻すまでに3か月ほどかかることもあります。
ただ、中谷選手はまだ若いので、比較的早く戻る可能性はあると思います。
眼窩底骨折から復帰する際に注意すること

僕自身も眼窩底骨折を経験しています。
ただ、僕の場合は手術をしていないので、手術後にどれくらいの期間、打撃を受けてはいけないのかなど、細かい部分までは分かりません。
僕の場合は、複視、つまり物が二重に見える症状がかなりありました。
そのため、目を動かす練習を繰り返し、複視がほとんどなくなるところまで回復させました。
見え方がおかしい場所が残っているうちは、実戦練習はあまりやりたくありません。
例えば、上を見たときに物が二重に見えるのであれば、眼球を上に動かした際に正確に見えないということです。
その状態で実戦練習を行うのは危険です。
まずは見え方が正常に戻っているかどうかが、重要なポイントになると思います。
PFP1位になるには井上尚弥との再戦が必要

中谷選手は、もう一度パウンド・フォー・パウンド1位を目標にすると話しています。
今の状況でPFP1位を目指すのであれば、やはり井上尚弥選手との再戦にこぎつけることが必要だと思います。
僕も再戦は見たいですし、面白い試合になると思います。
ただし、スーパーバンタム級で前回と同じ条件のまま再戦するよりも、僕はフェザー級で見たいです。
中谷選手がまずスーパーバンタム級でタイトルを取り、その後フェザー級へ上げる。
フェザー級でも誰かチャンピオンを倒して、ベルトを獲得する。
井上選手もフェザー級でタイトルを取ると思うので、お互いにベルトを持った状態で、フェザー級の統一戦にこぎつける。
それが一番分かりやすい道ではないかと思います。
井上選手がPFP1位にいる間は、井上選手を超えなければ中谷選手が1位になるのは難しいでしょう。
現在1位の井上選手を超えることが、誰もが納得するPFP1位の取り方だと思います。
再戦へ向けた現実的な道筋

まずはスーパーバンタム級でタイトルを取ることが必要です。
その後、フェザー級へ上げてタイトルを取る。
井上選手は、現在噂されている試合の先にフェザー級へ上げると話していますが、フェザー級へ転向して、いきなり統一戦を行う可能性は低いと思います。
そのため、中谷選手も同じくらいのタイミングでフェザー級のタイトルを取れるように準備する必要があります。
今年試合をしないのであれば、来年の前半くらいにスーパーバンタム級のタイトルを獲得し、早めにフェザー級へ上げる。
そこでフェザー級のチャンピオンを倒す。
お互いにベルトを持った状態で、フェザー級の統一戦を実現させる。
そのような流れが必要になると思います。
スーパーバンタム級では井上尚弥以上の勝ち方が求められる

スーパーバンタム級で世界的な評価を高めるのであれば、圧倒的な勝ち方を見せる必要があります。
井上選手がスーパーバンタム級で一番苦戦した相手は、中谷選手だったとも言えます。
その状況で評価を上げるには、スーパーバンタム級で無双するしかありません。
強いと言われているラモン・カルデナスやムロジョン・アフマダリエフといった選手に圧勝することが必要です。
それも、井上選手以上の勝ち方を求められると思います。
ただ、僕は最終的にはフェザー級でタイトルを取ることが必要だと考えています。
復帰戦は来年春頃か

中谷選手は今年中に試合をしないと話しています。
そうなると、復帰戦は来年の春頃、遅くとも4月頃までになるのではないでしょうか。
いきなりタイトルマッチを行うのか、一試合挟んでからタイトルマッチへ進むのかは分かりません。
ただ、復帰戦からいきなりタイトルマッチとなると、少しリスクはあると思います。
初黒星を成長につなげられるかは選手次第

今回、中谷選手はプロ初黒星を喫しました。
この敗戦をきっかけに成長できるかどうかは、選手次第です。
初黒星を経験し、それを栄養にして強くなれる選手もいれば、心が折れてしまう選手もいます。
実際に復帰して戦ってみなければ分からない部分です。
ただ、中谷選手は大丈夫ではないかと思います。
中谷選手には大きな目標があり、今回の敗戦も、その目標へ向かう途中の出来事として捉えているように感じます。
もちろん、本人と直接話したわけではないので、本当のところは分かりません。
それでも、中谷選手は目標がぶれない選手なのではないかと思います。
より強くなった中谷潤人の復活に期待

今回の再起報告会での発言を聞き、前回の敗戦をきっかけに、さらにモチベーションを高め、以前よりも強くなった中谷選手が復活することを楽しみにしています。
怪我も順調に治っているようなので、僕としては本当に良かったと思います。
中谷選手には、ここからさらに強くなり、もう一度、井上尚弥選手との試合にこぎつけてほしいです。
僕はフェザー級での再戦を見たいと思っています。
中谷選手がそこへたどり着けるよう、頑張ってほしいです。
まだ若く、これから伸びる部分もたくさんあると思います。
より強くなって帰ってきてほしいと思っています。頑張ってください。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
元プロボクサー
世界ランキング最高7位
第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
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