こんにちは、椎野です。
ボクシングで勝敗を分ける要素の一つが「距離感」です。
自分にとって心地よい距離を把握し、そこから戦術を展開できるかどうかが試合の流れを大きく左右します。
では、自分の「得意な距離感」とは何でしょうか?これは選手のスタイルや感覚によって異なりますが、共通するポイントや練習方法があります。
この記事では、自分に合った距離感を見つけるためのヒントと、僕自身の実体験を交えて詳しく解説していきます。
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- この記事を書いた人
- 元プロボクサー
- 世界ランキング最高7位
- 東洋太平洋タイトル獲得
20年以上のボクシングキャリアを活かし
- ボクシング特化型パーソナルトレーナー
- トレーナー育成講師
- プロ専門ボクシングトレーナー
として活動しています。
担当した選手がチャンピオンベルトを獲得した数は10本以上。勝率はプロボクシング界の中でもトップクラス。
ボクシング好きなあなたに役立つボクシング情報を発信していきます。
自分の得意な距離感とは?
距離感には大きく分けて「遠い距離」と「近い距離」があります。
自分の得意な距離感を把握する方法として以下を参考にしてみてください。
- 落ち着いてディフェンスができる距離
- 自分の攻撃が届く射程距離
- 自信を持って戦える感覚
ディフェンススタイルによる距離感の違い
例えば、ガードを主体とする選手は、近距離戦を好む傾向があります。近距離にいれば、ガードで相手の攻撃を防ぎやすく、自分のスタイルを活かせるからです。
一方、目でパンチを外す(目で見て自分の反応速度を活かして相手のパンチを避ける)スタイルの選手は、スウェーバックやボディワークを駆使し、相手との距離を保ちながら戦いたい選手が多いです。この場合、パンチがギリギリ届かない距離が心地よいと感じると思います。
自分のスタイルを理解する
距離感を掴むには、まず自分のディフェンススタイルを理解することが大切です。
- ガードを活かしたいのか?
- ボディワークでかわしたいのか?
- ステップなどで外したいのか
また、自分が得意とする攻撃も距離感に影響します。
フック系のパンチが得意な選手は近距離戦を好みますが、ストレート系のパンチが得意な選手は中間距離や遠距離を得意とすることが多いです。
【実体験】僕が実践した効果的な距離感の掴み方
ボクシングにおいて、距離感を制することが試合の勝敗を握る大きな鍵となるわけですが、今回は、僕自身が現役時代に実践していた距離感の見つけ方についてお話しします。
ゴングが鳴ったら最初のアクション
試合開始のゴングが鳴り、相手と向かい合います。もし相手がオーソドックススタイルの場合、まずは相手の前の手(左手)に対してジャブを打つなど、こちらも前の手で何かしらのアクションを起こします。ここでは相手の反応を探るのが目的です。
相手が特に何もしてこなければ、次は相手の奥の手(右手)に対してジャブを放ちます。このジャブは軽く触れる程度で、当てに行くものではありません。この時点で、まだ僕の射程距離ではありません。パンチが届かない位置から、相手の奥の手に軽くタッチして反応を観察します。
相手の反応を利用して距離を掴む
ジャブに対する相手の反応がポイントです。フェイントや駆け引きを仕掛けていると、相手がジャブを打ってくることがよくあります。その際、僕は右手でパーリング(パンチを払いのける動作)をします。このパーリングを繰り返す中で、自分にとって最適な距離感を掴んでいきます。
自分の落ち着ける距離
僕の場合、このパーリングの距離感が心地よいと感じます。この距離で戦っていると、攻撃も防御もバランスよく行えるため、落ち着いて試合を運ぶことができます。
逆に、ブロッキングが必要になるほど近い距離に入ると、動きが制限されやすくなるため、その距離には極力入らないようにしています。
自分の距離感と得意な戦い方を見つける方法
ボクシングで自分に合った距離感を見つけることが大切ですが、それは選手それぞれの感覚や経験、そしてバックグラウンドによって異なります。
柔道など近接格闘技の経験がある選手は、ガードを固め、相手に触れるほどの近い距離に安心感を覚えることが多いです。この場合、遠距離から近づく際のディフェンス技術が求められます。
特にブロッキングを得意とする選手は、相手の攻撃を防ぐ中で距離感を掴むことが多いです。遠い距離が苦手だからこそ、まずは自分の射程距離まで入ることを優先します。
遠距離が得意な選手は、ジャブやストレートをメインに戦います。距離を保つためにステップワークやスウェーバックを多用し、相手を寄せ付けない技術が重要です。
ゴロフキン選手に見る距離感の作り方
近い距離でのフックやアッパーを得意とする選手の中でも、ゲンナジー・ゴロフキン選手はその典型例です。
彼は強力なジャブを使って、以下のようなプロセスで距離を作っています。
- ディフェンスとフェイントで距離を調整しながら相手に近づく。
- 自分の射程距離に入ると、強いジャブで相手のバランスを崩す。
- そこからフックやアッパーのコンビネーションで攻撃を仕掛ける。
このように、ディフェンスとジャブを駆使して距離感を作り上げることが、彼の戦い方の特徴です。
距離感の得意不得意を理解し、トレーニングに活かす
距離感の得意不得意は、選手それぞれの感覚や育ってきたボクシングスタイルに影響されます。
例えば、僕の場合はアマチュアボクシング出身で、前後のステップワークやストレート、ジャブを基本にしてきたため、遠い距離を好む傾向があります。
一方で、ボクシングを続ける中で近い距離が得意だと感じる選手もいるでしょう。重要なのは、自分の得意な距離を自覚し、それをトレーナーと共有してトレーニングに活かすことです。
苦手な距離へのアプローチ方法と得意な距離を活かすポイント
ボクシングでは、自分の得意な距離を伸ばしつつ、苦手な距離も克服する努力が必要です。
以下のように取り組むことが効果的です。
- 遠距離が得意な選手は、近距離での攻防を練習し、総合力を高める。
- 近距離が得意な選手は、遠距離でのジャブやステップワークを強化する。
苦手な部分を克服することで、得意な距離感をさらに活かせるようになります。
また、メンタル面にも良い影響があります。例えば、近距離が苦手な選手が近距離の練習を積んでおけば、試合中に万が一近距離戦に持ち込まれた場合でも、焦ることなく、怖がることなく、「まあいいか」と落ち着いて戦えるようになります。
そういった意味で、苦手な距離の練習が大切です。
苦手な距離を克服するには
得意な距離は新しい技術を吸収しやすいですが、苦手な距離ではそれが難しいため、練習を重ねて改善を目指します。
しかし、遠距離が得意な選手が近距離だけを練習すると、本来の強みを忘れてしまう可能性があります。長所を維持しながら苦手を補うことが大切です。
得意な距離を最大限活かす方法
得意な距離感は、新しい技術を身につけやすいポイントでもあります。得意な状況下では、自然と新しい戦い方が生まれる上、技術が吸収されやすく、成長を実感しやすくなります。
得意な距離を武器にしつつ、苦手な距離も補えば、戦術の幅が広がり、試合での対応力が向上します。
距離感の練習ポイント
- 自分のスタイルを理解する
- 落ち着いて戦えるディフェンス方法を見極める。
- 得意なパンチやコンビネーションを確認する。
- 試合を想定し、理想的な間合いを維持する練習を重ねる。
- 距離感や戦術について定期的にトレーナーと話し合い、効果的な練習方法を模索する。
苦手な距離の克服と得意な距離の活用をバランスよく取り入れることで、総合力を高めていきましょう。
まとめ
ボクシングにおける「距離感」の重要性と、その掴み方について解説してきました。
自分の得意な距離感を把握するための方法と考え方についてのポイントのまとめです↓
- 距離感の重要性
ボクシングでは「遠い距離」と「近い距離」の使い分けが重要で、自分にとって快適な距離感を把握することが試合の鍵となる。 - 自分のスタイルに合った距離感
- ガード主体の選手は近距離戦を好む。
- 目でパンチを外す選手は、遠距離を保ちつつ戦うのが得意。
- 自分の攻撃スタイル(フック系かストレート系)によって、得意な距離が変わる。
- 距離感の掴み方
試合中に相手の反応を観察しながら、距離感を調整する。ジャブやパーリングを使い、自分の落ち着ける距離を見つけることが大切。 - 近距離と遠距離の戦術
- 近距離を得意とする選手は、ディフェンス技術を活かしながら距離を縮める。
- 遠距離が得意な選手は、ジャブやステップワークを駆使して距離を保つ。
- 練習方法とトレーニング
自分の得意な距離感を理解し、苦手な距離も克服することで総合力を高める。苦手な距離でも練習し、得意な距離で戦術の幅を広げることが重要。 - ゴロフキン選手の距離感の例
ディフェンスとフェイントを使いながら、相手との距離を調整し、得意な近距離戦に持ち込む。 - 距離感の練習ポイント
自分のスタイルを理解し、得意な距離を武器にして、試合中の理想的な間合いを維持するための練習を重ねる。
ボクシングでの距離感は試合を左右する重要な要素です。自分の得意な距離を理解し、それに応じた攻撃と防御を身につけることで、戦術の幅が広がり、試合での柔軟な対応力が向上します。
苦手な距離も克服し、得意な距離を最大限に活用しましょう。