
ボクシングの指導をしていると、同じメニューを渡しても、選手によって反応はまるで違います。
「この動き、なんで必要なんですか?」と細かく理由を聞いてくる選手もいれば、「言葉はいいから、とりあえず打たせてください」と、感覚で覚えたいタイプもいる。
どちらが正しいわけではありません。問題は、伝え方が選手に合っていないとき、こちらの意図がまったく届かないという点です。
理屈っぽい選手には、理論で道筋を見せる必要がある。感覚派の選手には、体で覚えられる空間を作ってあげなければならない。
自分自身、そうしたタイプの違いに気づけず、何度も練習が空回りした経験があります。
この記事では、実際のボクシング指導現場での体験をもとに、選手のタイプに合わせた接し方や声のかけ方について整理してみました。
トレーナーとして「この選手、どう育てたらいいんだろう」と悩んだことがあるなら、ぜひ参考してみてください。
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理屈派の選手:言葉で納得、理論で動くタイプ

選手の中には、ひとつ動きを教えるにも、「なぜこのタイミングで打つのか」「このステップの意味は何か」と、すべてに理由を求めるタイプがいます。
彼らは感覚では動けません。理解があって初めて体が反応する。そのスタイルが確立している選手には、勢いや雰囲気だけの指導は響きません。
ボクシングで言えば、たとえば「ワンツーを打ったあと、なぜ半歩外に出るのか」。こういった問いに対して、「リスクを避けるため」といったざっくりした答えでは不十分。
「相手の反撃(特に右カウンター)を受ける確率を減らすため」や、「次のアングルで攻めるためのポジショニング」といった、戦術的な文脈とセットで説明することが求められます。
理屈派の選手は、自分の中に「納得ライン」があり、そこを越えないと行動に移しません。
逆に言えば、そのラインさえ突破できれば、自分で考え、修正し、習得のペースも早くなる傾向があります。
このタイプには、口頭の説明だけでなく、図を使った説明や、試合動画を一時停止してポイントを指し示すなど、視覚的な要素も効果的です。
スローモーションやフレーム分析も有効で、特に動作分解が得意な選手であれば、自分の癖に気づくこともあります。
重要なのは、「こうしろ」ではなく「なぜそうしたほうがいいのか」を共有すること。
理屈で考える選手には、こちらも理屈で返さなければ、信頼関係は築けません。
感覚派の選手:考えるより感じて動きたいタイプ

一方で、理屈ではなく「動きそのもの」で覚えたい選手もいます。感覚派の選手です。
このタイプは、頭で理解するよりも先に、まず体を動かして感触を確かめようとします。説明を長くされると、逆に手が止まり、動きがぎこちなくなることも少なくありません。
彼らにとっては、「こうすれば当たる」「この位置にいると打ちやすい」という実感の方が、何よりも確かな基準になります。
たとえばフックの打ち方を教えるとき。理屈派には「肘の角度は90度」「重心は軸足に残す」と説明しますが、感覚派には「ゴムがしなるように」「円を描くように振ってみて」といった比喩の方が響きます。
その選手の中でイメージが動きに変われば、多少フォームが独特でもパフォーマンスとして成立することが多いのが、このタイプの特徴です。
また、感覚派は映像よりも「誰かの動きの真似」から学ぶ傾向があります。
ジム内でうまい選手の動きを見て、自分なりに近づけようとする。だからこそ、良い見本が身近にいるかどうかが大きな影響を与えます。
逆に、やること全てを言語化してしまうと、かえって動きが硬くなり、「頭で考えてミスをする」ことにもつながります。
感覚派には、成功体験を何度も繰り返し、体に染み込ませるアプローチが必要です。
うまくいったときには「今のすごくいい」「その距離感、覚えておこう」と伝える。
本人が感覚の中で答えを見つけられるよう、外から整理してあげることが、トレーナーの役割になります。
理屈で方向を決めず、感触を尊重する。感覚派の選手と向き合うには、こちらも感じ取る力が求められます。
伝え方の最適化こそ、指導の本質

どんなに優れたメニューを組んでも、それを「どう伝えるか」で選手の反応はまったく変わってきます。
ボクシングのトレーナーにとって大切なのは、教える内容そのものだけでなく、その伝え方を“選手ごとに合わせて変える”という視点です。
たとえば同じ「距離感の取り方」を指導するとしても、理屈派の選手には「ステップイン時に前足の着地点を10cm前に設定しよう。そうすると自分の打てる間合いに入る」と説明します。
一方で感覚派の選手には、「もっと相手の呼吸に乗るように前に出てみて」といった、言葉の雰囲気やリズムを感じ取れるような伝え方のほうがイメージしやすい。
内容は同じでも、表現を変えるだけで理解の深さがまるで違うのです。
選手に合わせて説明を切り替えるには、まず相手のタイプを見極める必要があります。これは会話の中やリアクションの様子から判断できます。
質問が多く、言語に対する反応が鋭い選手は理屈派。逆に「まずやってみていいですか?」が口癖の選手は感覚派の傾向があります。
さらに、グループ練習では、同じ空間にタイプの違う選手が混在するケースもあります。
そういうときは「全体に向けた説明」と「個別にかける言葉」を分けることで、伝わり方のばらつきを減らすことができます。
一つのメニューの意図を複数の角度から伝える。
たとえば
「この練習メニューは距離感の体得のため。
理屈でいうと“自分の有効打が届く位置をキープしつつ、相手のカウンターの射程外に立つ”ことを理解する練習。
感覚でいうとこの位置なら当てられるし、返されにくいという気持ちいい間合いを体で覚える練習」
というように。
結局のところ、トレーナーは一つの説明スタイルだけでは、限界がきます。
選手に合わせて、言葉の粒度も、順序も、温度も変えていく。それが、長く選手と向き合っていくために欠かせない技術です。
よくある失敗:接し方を間違えたことで起きるズレ

選手に合った接し方が大事だと頭ではわかっていても、実際の現場ではなかなかうまくいかないこともあります。
ここでは、タイプに合わない指導をしてしまったことで、選手との間に起きた“ズレ”の具体例を紹介します。
理屈派を感覚で押し切った結果…
あるとき、試合を控えた理屈派の選手に「もっと思いきっていこう」とだけ伝えてスパーをさせたことがありました。
こちらとしてはテンポを上げたかっただけだったのですが、選手は迷い始めてしまい、ガードが雑になり、反撃のタイミングも読めなくなった。
後から聞くと、「思いきるってどういう意味か分からなかった。何を意識すればよかったのか」と言われました。
このとき痛感したのは、勢いや流れといった感覚的な言葉は、理屈派にとってはむしろノイズになるということ。
頭で整理されていないものは、動きに変換されない。
本人の判断基準に情報が届かないまま、トレーナーだけが先走っていた典型でした。
感覚派に理屈を詰めすぎて崩れたケース
逆に、感覚で打てていた選手に対して、細かくフォームの角度やステップ幅を指導しすぎたこともあります。
たしかにデータ上では修正点があったかもしれません。でも、急に「膝の曲げ方を10度変えて」などと理屈で詰めたことで、得意だった動きがぎこちなくなり、自信もなくしてしまいました。
感覚派の選手は、自分の気持ちよさを頼りに動いています。
そこに理屈で切り込むと、「これで合ってるのかな…」と迷いが出てしまう。
一度崩れた感覚を取り戻すには時間がかかり、結果的に成長のリズムが崩れてしまいました。
選手の調子が落ちたとき、内容ではなく「言葉選び」や「接し方」が原因ということは、実はよくあります。
だからこそ、自分の指導スタイルにこだわりすぎず、タイプに合わせたアプローチを意識していく必要があります。
まとめ:選手を理解する技術がトレーナーの武器になる

技術やメニューを教えること以上に、ボクシングのトレーナーに求められるのは「相手を理解する力」だと、現場に立っていて感じます。
理屈で理解したい選手、感覚で動きたい選手、それぞれが違う方法で成長しようとしている。
その違いに気づかずに、一律の言葉ややり方を押しつけてしまうと、選手は迷い、伸び悩んでしまいます。
逆に言えば、選手のタイプに合わせて接し方を少し変えるだけで、伝わる精度が大きく変わってくる。
言葉を選ぶこと、伝え方を工夫すること、それはトレーナーが持つ目に見えないスキルの一つです。
指導に正解はありません。ただ、選手の反応を丁寧に観察し、「この子にはこう伝えると届くかもしれない」と考え続けること。
その積み重ねが、結果として選手の成長につながっていく。そう信じています。
選手を動かすのは、必ずしもテクニックだけではありません。
理解しようとする姿勢が、選手の力を引き出すきっかけになります。
技術は練習を続ければ伸びていきます。
でも、結果が出せるかどうかは“考え方”や“向き合い方”で大きく変わります。
「このままでいいのかな」「もっと成長できるはずなのに」
そんなふうに感じた時は、一度マインドを整える時間を取ってみてください。
僕もこれまで、そういうタイミングを経験した選手たちを何人も見てきました。
必要なのは、迷った時に支えになる考え方と、前を向く力です。
自分をもう一段階引き上げたいと思った時は、こちらもぜひ参考にしてください。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
元プロボクサー
世界ランキング最高7位
第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
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