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ボクシングフィットネスジム
SUSAジム代表:須佐勝明氏
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こんにちは、椎野です。
今回は、日本のアマチュアボクシング界を牽引し、天才ボクサーとしてその名を轟かせた須佐勝明さんに、アマチュアとプロボクシングの違いについて深く掘り下げるインタビューを行いました。
須佐さんは2012年に、ロンドンオリンピック日本代表としても活躍され、その経験を生かして現在は日本ボクシング連盟理事としてもご活躍されています。アマチュア経験を経てプロになった選手たちにとっても、須佐さんの言葉は貴重な指針となることでしょう。
ボクシングの世界には、アマチュアボクシングとプロボクシングという二つの顔があります。それぞれに独自のルールや魅力があり、選手たちのキャリアも大きく異なります。
このインタビューでは、アマチュアボクシングとプロボクシングの違い、アマ上がりのチャンピオンが多い理由、そしてアマチュア未経験者がプロの世界で成功するための秘訣に迫ります。
- この記事を書いた人
- 元プロボクサー
- 世界ランキング最高7位
- 東洋太平洋タイトル獲得
20年以上のボクシングキャリアを活かし
- ボクシング特化型パーソナルトレーナー
- トレーナー育成講師
- プロ専門ボクシングトレーナー
として活動しています。
担当した選手がチャンピオンベルトを獲得した数は10本以上。勝率はプロボクシング界の中でもトップクラス。
ボクシング好きなあなたに役立つボクシング情報を発信していきます。
- 本記事の内容
アマとプロの違い:ボクシング界の異なる戦い方とビジネスモデル
ーアマチュアボクシングとプロボクシングの大きな違いは何ですか?
須佐:僕はアマチュアボクシングとプロボクシングは、スポーツと格闘技くらい畑が違うと思います。プロはグローブが薄く、ラウンドが長く、いかにダメージを与えるかという点で格闘技です。一方でアマチュアボクシングは、いかに打たせず打つか、ポイントを稼ぐかという点でスポーツです。他の競技に近いところがあるので、スポーツと格闘技の違いだと思います。
ービジネスモデルも違いますよね。
須佐:プロボクシングでは、選手は個人事業主です。トレーナーはいますが、自分でブランディングして売り込み、スポンサーを集めたり人気を集める必要があります。チケットを買ってもらうためにどうするか。今はSNSが発信源になっており、自分をどうブランディングして売り込むかが重要です。ビジネスとしても異なります。
ープロボクシングはその点が少し弱いですよね。キャラクター作りや魅せる意味でも、興行面でも。ビジネスとして考えると、もう少し派手に頑張ってお客さんに届ける努力が必要だと思います。観客に届けなければなりません。アマチュアボクシングは見てもらうためにやっているわけではないので、その辺は違いますね。
須佐:昔はボクシングが相撲やプロレスと並ぶ三大格闘技でしたが、平成令和になってRISE、K1、RIZINなど他の格闘技に隠れてしまった感じ。
ービジネスの観点から言えばキックボクシングや総合格闘技は観客に向けた発信が上手ですよね。
須佐:ボクシングの技術は昔より今の選手の方が上がっています。技術は上がっているけれど、ブランディングや発信力が追いついていない、まだやっていない。昭和のままです。
ー今は試合もネット配信されるので観られることは増えていますが、それだけでは不十分ですよね。ボクシングをもっと応援してもらうためにも、ボクサーはファンをつけたり、スポンサーをつける必要があります。ボクシングのレベルも上がっているので、それを発信してもっと知ってもらう必要がありますよね。*晝田はもっと大きくなれる選手だと思います。試合でも魅せられますよね。
須佐:女子選手を全部知っているわけじゃないですけど、人気のある選手だと*晝田と*山中はルーキー。女子の代表二人になったなと僕は思います。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%9D%E7%94%B0%E7%91%9E%E5%B8%8C
※晝田 瑞希は、日本の女子プロボクサー。岡山県岡山市出身。スタイルはサウスポー。三迫ボクシングジム所属。第4代日本女子フライ級王者、第9代WBO世界女子スーパーフライ級王者。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%AD%E8%8F%AB
※山中 菫(やまなか すみれ、2001年11月20日 - )は、日本の女子プロボクサー。大阪府南河内郡美原町(現・堺市美原区)出身。真正ボクシングジム所属。現WBO女子アジア太平洋アトム級王者。現IBF女子世界アトム級王者。
アマ上がりプロボクサーの強さの秘訣:『打たせず打つ』防御力の極意
ーアマ上がりのボクサーがチャンピオンになることが多いですが何故だと思いますか?
須佐:自分が打つのもそうですが、アマチュアボクサーは防御力が高いです。アマチュアの試合は「打たせず打つ」ことが主軸で、お互いに打ち合うと判定が割れやすいんです。
ーどっちが勝ってるかわからないんですよね。
須佐:全日本何連覇もできるような本当に強い選手は、相手に打たせずに試合を進めることができます。これがアマチュアボクサーが目指す姿でもある。だからプロに移行しても、これが根底にあるんです。更に言うと、当てるけど打たせない。バックステップだったりフェイントをかけたりして相手に空振りさせたりして相手に打ちづらくさせる。アマチュアボクサーは見えないパンチを打って相手に脅威を与えて、相手がパンチを出しにくくなるような動作がたくさん出来るんですよ。
ー 打つ前の動作が上手いということですよね。
須佐:見えないパンチを打つから相手もビビってなかなか本領発揮できない。だからラウンドを重ねるごとに主導権を取って行ける。アマチュアボクシングはトーナメント形式で、様々なタイプの選手と対戦します。サウスポー、オーソドックス、アウトボクサー、インファイター。その中で勝ち進まなければいけない。そのため、試合ごとに異なる想定をして、自分のボクシングスタイルを変えていく必要があるんです。対応力が必要なんですよね。これが強さに繋がり、勝てる。
プロとの技術差を覆す!アマチュア経験ゼロからの接近戦略
ーアマ経験のないボクサーがアマ上がりの選手に勝つためには?
須佐:これはただ一つしかないと思っていて。アマチュア経験が浅い選手がアマ上がりの選手と戦うためには、接近戦に持ち込むことが重要だと思います。距離が遠いほど技術が必要になりますから、アマ上がりの選手と同じレベルの技術を短期間で身につけるのは相当難しいです。
ー技術をこれから作っていくのは厳しい?
須佐:技術でトップアマに勝つのはほぼ不可能です。そこで大切なのは、ブレないガードを使って相手を疲れさせたり、打ってきた瞬間にカウンターを合わせて接近戦に持ち込むことです。試合時間の中で、遠距離で戦う時間を最小限に抑え、近距離での戦いを増やすことがポイントだと思います。接近戦では、相手を体制を崩しながらボディを叩いて足を止めるなど、嫌がらせの時間を増やしていかないといけないと思います。トップアマは接近戦をやってもうまいので、ただ単純に接近して戦うだけではなく、相手を押したりサイドにズレたりするなど、一辺倒じゃない戦い方を見せることが大切です。
ー体制を崩した状態で打ち合わせるというイメージですよね。僕も今アマ上がりの選手を見ていて思うのが、接近戦がみんなできるというか打ち合える選手多くて。接近しても強いなという印象があります。アマチュアは毎日実戦のようなトレーニングをしていますが、プロは週に数回のスパーリングしかできない。その辺で結構技術力の差をすごい感じます。あとプロはアマのハイテンポについていけないというのを感じてるんですよね。インファイトやっても一個一個の展開を作るのはアマのが早くて、対応できていない。アマチュアのハイテンポな戦い方に対応するためには、短距離走のようなスピードを身につけないと勝てないということは選手によく言っています。
須佐:スタミナがあってフィジカルが強い選手に少しずつ主導権を取られていくというか。アッパーもうまいからたたき上げになるとそれに惑わされて当たってしまうんですよね。だから中に入って戦うためには、いかにしっかりガードできるかが大事だと思いますよ。
バンバンバンバンもらいながらやったら、相手も余裕が出て自分のボクシングをしやすくなってしまう。
村田選手のような鉄壁のガードができれば、相手の攻撃を耐えながら中に入って戦うことができます。
ーガードで耐えれるフィジカルも絶対必要ですよね
リングの中で異なる戦い方―アマとプロの指導法の違いを探る
ープロとアマの指導法の違いはどうですか?
須佐:競技の根本が違うじゃないですかアマとプロは。テンポやラウンド数も違うため、指導法もそれに合わせて変わってきます。正解かどうかは別として、プロはベタ足からいかに強いパンチを打つか。アマチュアは打って離れて打って離れてをいかに出来るかが主流ですよね。リングは同じでも、動き方が違う。
ー僕、ベタ足嫌いなんですよね。
須佐::俺も嫌い。
ー僕は基本的に、動きながら戦うことを重視しています。ブロックするにしても接近戦にしても、絶対にその場で戦うなと。サンドバッグが寄ってきても離れても嫌でしょ?10センチ離れるだけで嫌でしょ?って。サンドバッグが動くことで打ちにくくなるように、ガードする際も足を動かすことを教えています。僕はプロを指導しながらも、アマチュアベースの足を使った戦い方を取り入れています。重心はしっかり落とさせて、それでしっかりとパンチを打たせる方法も教えています。
須佐:僕はプロ主流の戦い方や練習方法は好きではないんですよね。椎野さん寄りなんですけど、打たせずに打つことを基本としています。その方がいいのかなって。というのも、トッププロの例として井上尚弥を挙げると、彼は相手に打たせない時間を作るじゃないですか。身長が低くても出入りすることで距離を作っているんですよ。
ー距離作ってますよね。テレンス・クロフォードもそうですよね。
須佐:ベタ足でガードして入って倒して世界チャンピオンになったとしても、その戦い方だと一辺倒なので世界を防衛するには厳しい。10回も20回も防衛して上にいくってなると。こういう戦いで名チャンピオンは出ない。
ー僕もそう思ってて、今までにも強い選手を振り返るとお互い届かないぐらいの距離でどう戦うかを探るのが上手いですよね。
須佐:ベタ足で打たせれば打たせるほど 選手生命が短くなっちゃうから。
ー怪我をしやすくなってしまいますよね。
須佐:そういう意味でも、プロのトレーナーはリテラシーをもっと勉強した方が良いと思っています。 自分が経験した方法だけで教えるトレーナーもいて、選手もそれについていってしまう場合もある。選手は個人事業者として自分で考え、どういうボクシングをしたいかを見極める必要があると考えています。
パンチ力アップの真実!フィジカルトレーニングの誤解を解く
須佐:勝ったり負けたりして、大体みんなやり始めるのがフィジカル。しかし、実際には体をうまく使えずに負けてしまう人も多いんです。それで、何をしたらいいか迷って僕のところに来たりすることもありますね。
ーフィジカルトレーニングはボクシングのベースの底上げですよね。ガードがしやすくなったり。でもパワーだけに頼ってしまうとパワーで負けた時に対応できなくなる可能性がありますからね。これまでの自分のボクシングスタイルを大切にしながら、上手く取り入れていくことが重要ですよね。
須佐:ボクシングの本質は「打たせずに打つ」ことです。これが基本的な考え。そこを助長するような戦い方とか打ち方とかガードとかそういうのやった方が良いと思います。フィジカルトレーニングをやってこけている人をいっぱい見ているので。トッププロがフィジカルトレーニングを行うのは、元々の基盤があり、防衛していく上で階級を上げるために行ったりする。最初からフィジカルトレーニングだけに頼る戦術はあまり見かけません。
ー僕は選手たちにフィジカルトレーニングをやるべきだと伝えてますし、指導もしていますが、ボクシングスタイルは変えるなと言っています。フィジカルトレーニングは自分のベースレベルを上げるためのもので、パワーボクシングになってしまうことは避けるべきですよね。 ベンチプレスの重量が上がったからといって、パンチが強くなるわけではないので。
須佐:フィジカルやって、腕鍛えました。めっちゃ筋肉あります。力で打ちます。それだけでは強いパンチを打つことはできないです。アマチュアもプロもトップレベルでは、動きながらいかに強く速いパンチを打てるかなんですよね。
例えば井上尚弥のように、一瞬でパンチを打つ能力は遠心力を利用して打っているんですよ。
トレーナーが細かい部分を教えることもありますが、実際の試合ではそんな細かいことを意識する余裕はありません。早く強く一瞬で打つことを考えると、大きな筋肉を使って全身で打つことが重要。体幹で全身を使って打つ必要があるんです。相手が動いていない状況で「行きます!バン!」と打つのは簡単ですが、井上尚弥のように駆け引きを交えて打つには、大きな筋肉を使う必要があります。
体の遠心力を利用することでどんな状況でも対応できる。大きな筋肉を使うことがミソかなと思っています。
ー素晴らしいお話を聞かせていただきありがとうございました。
まとめ:アマチュアとプロの違いとそれぞれの戦略やトレーニング
この対談を通して、アマチュアボクシングとプロボクシングの違い、それぞれの戦略やトレーニング方法について深く掘り下げることができました。
須佐さんの洞察により、スポーツとしてのアマチュアボクシングと、格闘技としてのプロボクシングの本質的な違いが明らかにされました。また、アマチュアからプロへの移行に際しての戦略や、パンチ力を高める方法についても、具体的なアドバイスを聞くことができました。
この対談から、ボクシングが単に力を競うスポーツではなく、戦略と技術の深い理解を必要とすることをお伝えできれば幸いです。アマチュアからプロへの転向を考えている選手や、アマ経験のないボクサー、ボクシングの技術を磨きたいと思っている方々にとっても、役立つ情報が共有されたことと思います。
この記事を読んでくださった皆さんが自身のボクシングライフに役立てられることを願っています。
というわけで今回は以上です。