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こんにちは、椎野です。

ボクシングをやっていると、「怪我するでしょ?」「危なくないの?」と言われることがよくあります。

ボクシングにおいて、足の捻挫や肩の怪我などの関節のトラブルは、どのスポーツにも共通するもので、特別に多いというわけではありませんが、目の怪我は非常に多く見られる問題です。

試合やトレーニング中に発生する衝撃や打撃が原因で、目に大きな負担がかかり、さまざまな深刻な怪我を引き起こすことがあります。

特に、網膜剥離や眼筋麻痺、眼窩底骨折、白内障などは、視力や日常生活に大きな影響を与える可能性があるため、早期の発見と適切な治療が重要です。

そこで今回は、ボクシングにおける怪我として特に注意してほしいことを実際の経験を交えながら詳しくお話ししたいと思います。

命に関わる可能性もあるので、ぜひ知っておいてください。

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  • この記事を書いた人
しいの
  • 元プロボクサー
  • 世界ランキング最高7位
  • 東洋太平洋タイトル獲得

20年以上のボクシングキャリアを活かし

  • ボクシング特化型パーソナルトレーナー
  • トレーナー育成講師
  • プロ専門ボクシングトレーナー

として活動しています。
担当した選手がチャンピオンベルトを獲得した数は10本以上。勝率はプロボクシング界の中でもトップクラス。

ボクシング好きなあなたに役立つボクシング情報を発信していきます。

ボクシングでよくある目の怪我について

まずは目の怪我についてお話ししたいと思います。

僕自身、ボクシングで目の怪我を数多く経験しているので、とても身近な問題です。

よく知られているものとしては、網膜剥離、網膜裂孔、眼筋麻痺、白内障などがあり、これらはボクサーにとって発生しやすい怪我です。

網膜剥離・網膜裂孔について

網膜剥離と網膜裂孔について説明します。

視野や視力をつかさどる網膜が剥がれたり破れたりする状態が「網膜剥離」と「網膜裂孔」と呼ばれるものです。

これはカメラで言うとフィルムが壊れたような状態で、映像を映し出す部分が壊れてしまっているようなイメージです。

初期症状と早期検査の重要性

網膜剥離や網膜裂孔には初期症状があります。

もし初期症状が出た場合、すぐに眼科で検査を受けることが重要です。

代表的な初期症状としては「飛蚊症」があります。これは、白い背景を見ると黒い点やアメーバのようなものが見える症状です。この飛蚊症が現れたら、眼科で「眼底検査」を受けることをおすすめします。

僕の場合も最初は飛蚊症が現れ、その後網膜裂孔と診断されました。

レーザー治療を受けましたが、最終的には網膜剥離に至りました。剥離が進行すると視野が狭くなり、視界が暗くなるといった症状が出てきます。

そのため、飛蚊症の段階で網膜に傷がついている場合には、早期に傷の広がりを抑えることが大切です。

網膜剥離・裂孔の発見方法と定期的な検査のすすめ

網膜剥離や網膜裂孔は、目を外から見てもわかりません。

眼底検査をしないと診断できないため、検査を行っている眼科を探し、定期的に受診することをおすすめします。発見や治療が遅れると失明のリスクもあるため、放置せずに早期の対処が大切です。

飛蚊症がなくても、網膜裂孔や剥離が進行しているケースもあります。実際にアメーバのようなものが見えたため受診した結果、網膜剥離が見つかったという例もあります。

心配な方は、定期的な眼底検査を受けることをおすすめします!

眼筋麻痺について

次に、眼筋麻痺について説明します。

眼筋麻痺とは、目を動かす筋肉が麻痺することで、焦点が合わなかったり、目を動かそうとしても片方の目が動かないために二重に見える症状が出る状態です。

ボクシングでは、眼窩底骨折の後に発症しやすく、骨折をしていなくても視界に違和感がある場合には眼筋麻痺が疑われます。

このような症状がある場合は、精密検査ができる医療機関での受診をおすすめします。

眼窩底骨折について

眼窩底骨折もボクサーによく見られる目の怪我の一つです。

これは眼球周辺の骨が折れてしまう状態を指します。例えば、目の下の骨が折れると、眼球が下に落ち込むため、目の位置がずれて二重に見えることがあります。

このため、視界がずれたり、気分が悪くなったりと、比較的わかりやすい症状が出ます。

自身の経験:眼窩底骨折の影響

※当画像はボクシングモバイル様より許可を得て掲載しております。

僕自身もこれまでに3箇所で眼窩底骨折を経験しています。

僕の場合、目のずれがひどくなかったため手術は不要でしたが、試合中に骨折した際は目が二重に見え、強烈な痛みが走りました。

正直、試合を続けられる状態ではありませんでしたが、なんとか我慢してやり遂げました。

眼窩底骨折の放置によるリスクと後遺症

眼窩底骨折を放置してしまうと、欠けた骨の部分に筋肉が引っかかり、目の動きが制限されて焦点が合わなくなることがあります。僕も現在、左上を見ようとすると少し二重に見える後遺症が残っています。

目のずれがひどい場合は手術が必要になることもあるため、早期に適切な治療を受けることが大切です。

白内障について

次に、白内障についてお話しします。白内障は、ボクサーに多く見られる目の怪我の一つで、僕自身も網膜剥離の後遺症として白内障を発症し、つい先日手術を受けました。

白内障になると、視野が真っ白になり、視力が著しく低下します。

外傷性白内障とその治療

ボクシングの場合、一時的に外傷性白内障を患うことがあります。

この場合、視野が白くなり、物が見えにくくなることがありますが、すぐに回復する人もいれば、治らない人もいます。

もし症状がひどくなると、ボクシングどころではなくなるため、しっかりと治療を受けることが重要です。

目の怪我における信頼できる病院を知っておくことが大事

目の怪我についてはここまでで終わりですが、僕がこれまでたくさんの怪我をしてきて感じたことは、信頼できる病院を知っておくことが非常に大切だということです。

特に、網膜剥離や眼窩底骨折などの目の大きな怪我をした場合、早期に適切な対応をしてくれる病院を知っていると安心です。

もし関東や東京在住の方であれば、信頼できる病院を紹介できますので、お悩みがある方はお気軽にご相談ください。

脳の怪我について

次に、脳の怪我についてお話しします。ボクシングでは頭部への衝撃が強いため、脳に関する怪我もよくあります。

特に、急性硬膜下血腫という病名を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

この怪我は、脳内出血の一種で、非常に危険です。これに関して知識を持っておくことが重要です。

急性硬膜下血腫の症状と危険性

急性硬膜下血腫は、簡単に言うと脳内出血で、意識喪失や、試合やスパーリング後に頭痛や気持ち悪さを感じることが特徴です。

もしこのような症状が出た場合、非常に危険な状態です。

また、眼窩底骨折などで視野がずれることや、脳内出血が原因で吐き気や嘔吐を引き起こすこともあります。症状を感じた場合は、すぐに病院に行き、適切な検査を受けることを強くおすすめします。

パンチドランカー症候群

パンチドランカー症候群もよく耳にする言葉です。

これは脳へのダメージが蓄積されることで起こる症状で、殴られるたびに細かい毛細血管が出血し、それが積み重なってパンチドランカーになると言われています。

しかし、パンチドランカー症候群はCTスキャンでは診断できない場合があるという点が特徴です。

脳の出血とCT検査

脳の出血に関しては、CTスキャンで検査が可能です。

試合後やスパーリングで激しく打ち合った場合、脳内の状態が気になる方は、安心のためにCTを撮ることをおすすめします。

僕自身も激しい打ち合いをした後は、CTスキャンを撮るようにしていました。保険が適用されることが多いため、積極的に検査を受けることが重要です。早期の発見が最も大切です。

目と脳の怪我についてのまとめ

ここまで、目と脳に関する怪我についてお話ししました。

繰り返しになりますが、視覚に関する異常—例えば、「気持ち悪い」「見え方が変」「目の動きが悪い」などの症状は、目の怪我の初期症状としてわかりやすいものです。

こういった症状が現れた場合、我慢せずにすぐに病院に行くことが非常に重要です。

特に網膜の傷は痛みを伴わないことが多いため、片目ずつチェックする習慣をつけて、早期発見に努めましょう。

怪我の早期対応と引退後の人生

ボクシングは命に関わるスポーツです。試合やトレーニング中の怪我は、その後の人生にも大きな影響を与えます。

引退後の人生の方が長いことを考えると、「怪我は早急に治す」「何かあったらすぐに病院に行く」といった心がけが非常に大切です。

セカンドオピニオンの重要性

また、セカンドオピニオンを受けることも非常に重要です。

僕自身、網膜剥離を患った際、一カ所目の病院では網膜剥離が見つかりませんでした。そのまま放置していた結果、網膜剥離の範囲が広がり視力が落ちてしまいましたが、別の病院で診てもらったところ、無事に手術を受けることができました。

ですので、何か不安があればすぐにセカンドオピニオンを受け、別の病院で診てもらうことをおすすめします。

ボクシングにおける重大な怪我

ボクシングをしていると、目と脳に関わる大きな怪我はその後の人生に大きな影響を与えます。これらの怪我は最も重要なポイントなので、必ず覚えておいてください。

外傷と拳の怪我について

次に、外傷や拳の怪我についてお話しします。ボクシングでは、骨折やボクサーズナックルがよく見られる怪我です。

ボクサーズナックル

ボクサーズナックルは、拳の腱が握った時にずれてしまう怪我です。

腱を支える組織が破けたり、傷ついたりすることが原因です。僕自身も大学生の時にこの怪我で手術を受けています。この怪我は癖になりやすいため、無理をせず、拳の怪我に詳しい先生に早めに診てもらうことが大切です。

手術が必要か、固定で治るかは症状に応じて異なりますので、自己判断せずに病院に行くことが選手生命を長続きさせるためのポイントです。

骨折

僕はこれまで骨折をしたことはありませんが、骨折は痛みや腫れなどで簡単に気づくことができます。骨折した場合、形が変わって固まる前にすぐ病院に行くことが重要です。

その他の怪我

アキレス腱の断裂や鍵盤損傷(肩の関節)などもありますが、これらはボクシングに特有の怪我ではなく、他のスポーツでも起こり得ます。そのため、ここでは省略します。

怪我の予防法

怪我を予防するためには、ウォーミングアップやクールダウンをしっかり行うことが大切です。

また、アウターマッスルばかりを鍛えるのではなく、インナーマッスルをしっかり鍛え、体の内側から強化することが予防につながります。

さらに、柔軟性を高めるためにストレッチを行い、可動域を広げることで、筋肉の怪我を減らすことができます。

首と腰の怪我について

ボクサーは殴られることが多いため、首や腰に大きな負担がかかり、頚椎ヘルニアや腰椎ヘルニアになる人も少なくありません。

頚椎ヘルニアと腰椎ヘルニア

首や腰が痛い、または痺れを感じる場合は、レントゲンやMRIを撮ることをお勧めします。

筋肉の張りだけであればそれほど心配はありませんが、椎間板を傷めてしまうと、回復に時間がかかることがあります。

首や腰の悩みを抱えている方には、僕が長年お世話になっている腰痛専門の先生を紹介できますので、お悩みの方はぜひご連絡ください。

練習中の怪我のリスク

ボクシングにおいて、怪我は試合よりも練習中に起こることが圧倒的に多いです。

特に目や脳に関する怪我は、ディフェンス力が不足している選手が連日スパーリングを行うと、重大なリスクを伴います。

ディフェンス力向上の重要性

ディフェンスに自信がない選手には、スパーリングよりも条件マスやマスボクシングでディフェンス力を強化することを強くオススメします。

殴り合いで強くなるという考え方もありますが、技術が未熟な状態での殴り合いは怪我のリスクやダメージの蓄積が大きいです。

ボクシングやその先の人生を考えたとき、まずはディフェンス力を向上させる練習が重要です。

脳のダメージとスパーリングについて

脳細胞は一度死んでしまうと回復しないため、パンチを受けないようにすることが重要です。

僕は選手に対して、できるだけ二日連続でのスパーリングを避けるようにしています。

ディフェンス力がしっかりしていて、連日スパーリングを行ってもダメージをほとんど受けない選手に対しては例外的に行うこともありますが、試合が近い場合でも基本的には連日のスパーリングは避けています。

自身の経験とスパーリングの頻度

現役時代、僕はスパーリングが多く、大きな階級の選手ともよく対戦していました。

特に3日連続で6ラウンドのスパーリングを行ったときは、かなり頭がボーっとしました。殴り合いが少なかったため、問題はありませんでしたが、スパーリングのリスクを強く感じました。

殴り合う選手はさらにリスクが大きくなるため、ディフェンスが良い選手でも、週3回程度までのスパーリングが適切だと思います。

まとめ:怪我の早期発見と治療の重要性

最後に、繰り返しになりますが、大きな怪我、特に選手生命に関わるような怪我をしてしまうと、ボクシング人生が終わるだけでなく、引退後にも後遺症が残り、仕事に支障をきたしたり、日常生活に影響を及ぼす可能性があります。

怪我をしてしまった場合は、できるだけ早く治療を受け、早期発見と早期の対応を心がけてください。

また、怪我が治らない場合や不安なことがあれば、オススメの病院をご紹介いたしますので、どうぞご連絡ください。