
「こっちは何度も言ってるのに、本人は全部自分で決めたがる……」
「アドバイスを聞いてくれない」
そんな“やりづらさ”を感じる選手、現場にいませんか?
今回は、“全部自分で決めたい”タイプの選手と、どう向き合い、どう伸ばしていくか。その考え方と実践的アプローチを3ステップで解説していきます。
こうしたタイプの選手は、自分で考える力がある反面、周囲と衝突しやすかったり、必要なことから目をそらす傾向もあるため、トレーナー側の関わり方次第で、大きく伸びるか、孤立するかが分かれることも珍しくありません。
この記事は、精神論や理想論ではなく、実際の現場で「この選手にはこの伝え方」「ここは任せていい/ここは誘導が必要」といった具体的な対応の引き出しを持ちたいトレーナーに向けた内容です。
タイプを見抜き、関わり方を整えることができれば、“全部自分で決めたい”選手は、誰よりも自走し、戦える存在になります。
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- 1. 「全部自分で決めたいボクサー」とは?特徴と指導の難しさ
- 2. 主体性を活かすために必要な3ステップ指導法
- 2.1. ステップ1|信頼ベースの関係性を構築する
- 2.2. ステップ2|判断の結果に責任を持たせる
- 2.3. ステップ3|自分で考える仕組みを作る
- 3. トレーナーが陥りやすいNG対応とその理由
- 3.1. NG対応①:すぐに修正指示を出してしまう
- 3.2. NG対応②:「任せきり」で放任してしまう
- 4. 自分で決める力が開花すると、選手はどう変わるのか?
- 4.1. 主体性が育った選手は、試合で自分を修正できる
- 4.2. 関わり方を間違えると「ただの自己中心」にもなる
- 5. まとめ:選手の違いを“見る目”こそ、トレーナーの最大の技術
「全部自分で決めたいボクサー」とは?特徴と指導の難しさ

“全部自分で決めたい”タイプの選手は、一見すると非常に頼もしく映ります。
自分の考えを持ち、練習メニューに対しても積極的に意見を述べ、試合中も指示を待たずに判断して動こうとする。
ですが、この自主性の裏には、トレーナーとの間に微妙なズレが生まれやすい要素が潜んでいます。
たとえば、「今日はマスボクシング(実戦)を長めにやりたい」と選手が言えば、それは自分なりの課題意識の現れかもしれません。
しかし一方で、「それよりもサンドバッグ打ちをしたほうがいい」と感じているトレーナーにとっては、必要な課題から逃げているようにも映る。
こうした“意図の食い違い”が、現場ではしばしば摩擦につながります。
さらに、指示を出そうとすると「自分でやるから」と反発されたり、チーム練習のリズムを乱すような行動をとるケースもあります。ここで大事なのは、「自分で決めたい=わがまま」ではない、という視点です。
彼らの多くは、自分の判断にこだわる理由を持っています。
それは、過去の成功体験であったり、逆に「人に任せて失敗した経験」であったりします。そこに気づかず一方的に指導すると、選手はますます殻にこもり、指導そのものが空回りしていきます。
このタイプの選手には、従来の「言われた通りに動け」型の指導はフィットしません。
必要なのは、「自分で考えること」を否定せずに、“考えさせる方向”をこちらが整えること。そのためには、彼らの判断をどう捉えるか、どこで介入し、どこで任せるかという線引きが、トレーナーの側に求められるのです。
主体性を活かすために必要な3ステップ指導法

「全部自分で決めたい」選手に対しては、管理よりも誘導の発想が欠かせません。
言い換えれば、トレーナーがやるべきことは「動かすこと」ではなく、「自分で動ける構造をつくること」。
では具体的にどうすれば良いのか、紹介していきます。
ステップ1|信頼ベースの関係性を構築する
まず最初に必要なのは、「任せられる選手なんだ」と本気で信じて接する姿勢です。
“全部自分で決めたい”タイプの選手は、裏を返せば「人に任せるとズレる」「信用できない」と感じている可能性が高い。そこを埋めずにいくらアドバイスをしても、拒絶されるだけです。
信頼関係は、表面的な励ましや共感では作れません。
選手が判断した内容に対して、すぐに否定せず、「なぜそう思ったのか」「どういう狙いだったのか」と問いかける姿勢をまず示しましょう。
たとえばスパーリング後に、「どういう意図であのカウンターを狙ったの?」と尋ねることで、選手の思考を尊重し、対話の糸口をつかめます。
こうしたやり取りの積み重ねによって、選手側も「このトレーナーは、ちゃんと自分の考えを見てくれる」と感じるようになり、初めて外からの視点を受け入れる“土壌”が整っていきます。
ステップ2|判断の結果に責任を持たせる
“全部自分で決めたい”選手には、自分の選択が試合や練習にどう影響したのかを、しっかり振り返らせる時間が不可欠です。
大事なのは、「選ばせる」ことと「結果に向き合わせる」ことはセットだという認識。
ここが抜けると、「好きにやらせたら空回った」で終わってしまい、本人もトレーナーも手応えを失います。
たとえば、選手が「今日のミットは距離感を重視したい」と提案してきた場合。
それを認めるなら、その選択によって何が得られたのか、何が足りなかったのかを言語化させることが大切です。
「じゃあ、終わってからどうだったか振り返ろう」と一言添えるだけで、選手は結果に意識して向き合うようになります。
また、試合やスパーリングでうまくいかなかったときも、すぐに介入して訂正するのではなく、「どうしてその判断をした?」「他の選択肢は考えなかった?」と問いかけることで、責任逃れではなく「自分の判断に向き合う」姿勢が育ちます。
重要なのは、結果がうまくいかなかったとしても、「選んだこと自体」を否定しないこと。
ミスの原因を探るときも、「だからやっぱり言った通りにしておけばよかったんだよ」といった言い方はNGです。
そう言われると、選手は次から判断そのものを避けるようになります。
選手自身が「自分の選択を分析し、必要なら修正する」という視点を持てれば、指示なしでも質の高い判断ができるようになっていきます。
これは、トレーナーが教えるのではなく、選手が学び取る機会を作ることで育ちます。
ステップ3|自分で考える仕組みを作る
全部自分で決めたい選手は、もともと「こうしたい」という思考のエネルギーを持っています。
その力を伸ばすには、「どうしたい?」と聞くだけでなく、考え続けられる環境と仕組みを用意することが必要です。
たとえば、練習メニューの一部を選手が決める時間にしてみる。
「今日は実戦とシャドー中心、どっちを先にやりたい?理由も含めて決めてみて」と投げかければ、ただ選ぶだけでなく、自分の状態や目的を分析する視点が生まれます。
また、問いかけを軸にした振り返りの習慣も非常に有効です。
スパーリング後に「今日、自分で工夫した部分は?」「その結果どうだった?」と聞くだけでも、判断→実行→分析というサイクルが定着していきます。
ここで重要なのは、毎回トレーナーが評価するのではなく、選手が考える時間を確保すること。
評価は後でいい、まずは言葉にさせる。それが考える習慣の基盤になります。
さらに、映像を使った振り返りも有効です。スパーリング映像を一緒に見ながら、「ここで前に出た理由は?」「逆に下がった選択はどうだった?」など、トレーナーが答えを教えるのではなく、問いかける形で進めることで、選手の思考が深まっていきます。
こうした仕組みづくりによって、「全部自分で決めたい」はただのこだわりから考え抜ける強さへと進化します。
自分で決める力を育てるには、「考えさせる」だけでなく、考え続けられる場を作ることこそ、トレーナーに求められる技術です。
トレーナーが陥りやすいNG対応とその理由

全部自分で決めたい選手を前にすると、トレーナーとしての対応にはつい力が入ってしまいがちです。
しかし、ここでやってしまいやすい“あるある”な対応が、かえって選手の主体性を潰す原因になっていることも少なくありません。
ここでは、現場で起こりがちな2つのNG対応と、その理由を説明します。
NG対応①:すぐに修正指示を出してしまう
「なんでそこで打たないんだ!」「もっと前に出ろ!」
つい口をついて出てしまうこの声。もちろん、状況によっては必要です。
しかし、“全部自分で決めたい”タイプの選手には、このような即時の修正が「自分の判断を否定された」と受け取られやすい傾向があります。
選手が判断する余白を持つ前に、正解を提示してしまうと、「どうせ言われるから考えなくていい」と無意識に思うようになります。これは、判断力の育成を止めてしまう最大の要因です。
本来、試合でも練習でも、気づく力こそが武器になる競技。
それを奪ってしまわないためにも、すぐに答えを出すのではなく、「さっきの場面、なぜその選択をしたか聞かせて」と、まずは思考を引き出すことが優先されるべきです。
NG対応②:「任せきり」で放任してしまう
「自分で決めたいって言うから、全部任せたら空回りした…」
これは逆方向に陥りやすい罠です。確かに、自立心のある選手には“任せる”ことが必要。でもそれは、放っておいても勝手に育つという意味ではありません。
自分で考えたい選手ほど、「見守られている」「必要なときは支えてもらえる」という感覚を持てることが重要です。つまり、放任ではなく選択的な関与をする必要がある。
例えるなら、完全に手を放すのではなく、横に並んで地図を広げておくような関わり方。選手が迷ったとき、「こういうルートもあるけど、自分ならどう行く?」と示すことで、判断の幅を持たせつつ、思考をサポートできます。
自分で決める力が開花すると、選手はどう変わるのか?

“全部自分で決めたい”という性質は、関わり方を間違えるとトラブルの種になりますが、適切に育てることができれば、試合中に最も頼りになる存在へと変わります。
ここからは、そのポジティブな変化と、逆に放置したままだと起こり得るリスクについて具体的に説明します。
主体性が育った選手は、試合で自分を修正できる
トレーナーが声をかけられない場面、試合中の予測不能な展開──そこで力を発揮するのが、「自分で考えて修正できる選手」です。
相手の動きに応じて戦い方を切り替えたり、想定外の展開にも動じずに対応できるのは、日頃から自分で判断し、結果に向き合う経験を積んでいるからこそ。
実際、ある選手は、1ラウンド目に相手の距離感に苦戦していましたが、2ラウンド目には接近戦に持ち込んでペースを取り返しました。
この変化の背景には、「なぜこの距離で負けているのか?」「自分の武器は何か?」を冷静に見直す思考の習慣がありました。
こういった選手は、トレーナーからの指示がなくても次にやるべきことを自分で導き出す力を持っています。
これは、どんなスタイルの選手よりも実戦力が高いことを意味します。
関わり方を間違えると「ただの自己中心」にもなる
一方で、自分で決める力があるからといって放置しすぎると、「人の話を聞かない」「修正を受け入れない」「周りが見えない」選手になってしまう危険性もあります。
試合で仲間やセコンドの声を一切聞かず、独自の判断で無謀な打ち合いに突っ込んでしまう。練習中も指摘されると不機嫌になり、自分のやり方に固執して改善しない。
このように、自分で決めることが他人の声を遮断することにすり替わると、選手としての伸びしろを自ら閉ざしてしまいます。
だからこそ、トレーナーがすべきは「選手の自立性を支えながら、社会性や柔軟性も育てる」こと。
そのバランスをどうするかが、“全部自分で決めたい”タイプの選手と長く向き合うためのポイントになります。
まとめ:選手の違いを“見る目”こそ、トレーナーの最大の技術

“全部自分で決めたい”選手にどう関わるか。
その答えは、技術論や精神論ではなく、「この選手はどういう視点で世界を見ているか?」を観察する目を持てるかどうかにかかっています。
トレーナーとしてできることは、「こうしろ」と答えを与えることではなく、選手が自分の選択を振り返り、考え直せる場や問いかけを用意することです。
ときに選手の判断を待ち、ときに問いかけ、必要なときには背中を押す。
その間合いの取り方こそが、トレーナーの真価だといえるでしょう。
誰かのマネではなく、自分のスタイルで、自分の責任でリングに立とうとする。
その意志を尊重しながら、どう育てるか。
その鍵になるのが、「伝え方の工夫」と「見立て力」です。
一人ひとりの違いを“見抜く目”があれば、指導の幅はどこまでも広がります。
気づけばその幅の分だけ、選手の判断が洗練されていく。そんな瞬間に立ち会えるのも、トレーナーの醍醐味です。
技術は練習を続ければ伸びていきます。
でも、結果が出せるかどうかは“考え方”や“向き合い方”で大きく変わります。
「このままでいいのかな」「もっと成長できるはずなのに」
そんなふうに感じた時は、一度マインドを整える時間を取ってみてください。
僕もこれまで、そういうタイミングを経験した選手たちを何人も見てきました。
必要なのは、迷った時に支えになる考え方と、前を向く力です。
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【この記事を書いた人】
アマチュア実績全国3位(東洋大)
元プロボクサー
世界ランキング最高7位
第43代OPBF東洋太平洋バンタム級王者
ボクシング特化型パーソナルトレーナー
世界・東洋・日本チャンピオン10名輩出
キッズボクサー全国チャンピオン5名輩出
キックボクサー世界チャンピオン指導
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