クロフォードを超える準備はできている──エニス118秒KOの衝撃

2025年10月11日（現地）フィラデルフィア。
元ウェルター級統一王者のジャロン・“ブーツ”・エニスが、ウイスマ・リマを118秒TKO。WBA世界スーパーウェルター級の暫定王者となり、2階級制覇を決めました。

ボクシングトレーナーの立場、そして“クロフォードファン”としての本音も交えて、今回の試合と今後を整理します。

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初見の印象：一方的。相手に何もさせなかった

強かったですね。ウェルター級時代から「エニスはすげー強い」と思っていましたし、ずっとテレンス・クロフォードとやってほしいと考えていました。

今回の試合は完全に主導権がエニス。相手はほとんど何もできていないように見えました。

勝負が決まった瞬間：スイッチ→右アッパー

エニスはオーソドックスで入り、途中でサウスポーにスイッチ。そこから右アッパーをカウンター気味に当てて効かせ、左・右・左で最初のダウン。立ち上がったリマに連打でストップ。

仕留めの場面は“特殊なこと”をしているわけではないですが、バランスが良く、単調にならない打ち分けでまとめ切っています。

内外をきちんと打ち分けられるので防ぎきれないですよね。

さらに1R序盤は体が温まっておらず効きやすい。最初のクリーンヒットでダメージが残り、回復前に畳みかけた形です。

スイッチの意図：相手を迷わせる“攻めの準備”

「どっちが攻めやすいか」を探ったのか、相手にやりにくさを与える狙いかは断言できません。

ただ、スイッチ＋スピード＋パンチ＋技術が揃っているので、相手からすると「いつ攻めればいいのか分からない」状況になります。

動きを見ても、相手は迷っていて攻め切れていませんでした。

ディフェンスも高水準：相打ち気味でも衝撃を逃がす

カウンターの右アッパーは相打ちに近いタイミングでしたが、エニスは相手の衝撃を逃がしながら打てる。

反応が良く、ディフェンス能力も高いです。攻撃力があるだけではなく、そこがセットになっているのが強みです。

階級適性：154は“合っている”。でも本質は「もともと強い」

本人も「階級を上げれば上げるほど強くなる」と語っています。
実際、体つきも大きく、ウェルター級での減量はかなり厳しかったはずです。
スーパーウェルター級では、動きに余裕が生まれているように見えました。

とはいえ、今回は短時間での決着だったため、
「後半での減量影響」までは検証しづらい試合でした。

結論としては、階級がフィットしたのは確かですが、
エニスの強さは“もともと持っていたもの”だと思います。

クロフォードとの比較：対応のクロフォード、破壊のエニス

• クロフォード：相手を徹底的に観察し、対応して勝つタイプ。距離感・コントロールが上手い。
• エニス：攻撃的。読まれる前に仕留めに行くタイプ。破壊力がある。

もし今やったら、僕はクロフォードが判定で勝つと予想します。
ただし2年後なら、エニスが上回る可能性は十分あるのではないでしょうか。

現時点の勢いはクロフォードですが、エニスはまだ伸びる年齢（28）。打たれ強さに関しては、クロフォードの“柔らかさ”を評価しています。

エディ・ハーンの「クロフォード超え」発言について

面白いと思いました。ハーンは強気なコメントが多い印象ですが、エニスがクロフォードを参考にしているのは間違いないでしょうし、同じスイッチヒッターとして比較されるのは自然です。KO率ではエニスが上だと思います。

ただ、技術はクロフォードが上だと僕は見ています。

発言の狙いは「クロフォード、出てこいよ」という流れづくりでしょう。

エニス vs ヴァージル・オルティスJr：僕の予想は“エニス有利（7：3）”

オルティスはガンガン来るファイター。

ただ、スピード差があり、フットワークもエニス。戦える距離の幅でもエニスが勝ると思います。
勝敗のポイントは、オルティスが自分の圧力レンジで戦えるかどうか。

僕はエニスのKO勝ちを予想します。

それでも“時代の決定戦”はクロフォード戦

チャーロ、フンドラ、ムルタザリエフ、ザヤス……スーパーウェルターは層が厚い。それでもエニスは頭1つ抜けているように見えます。

とはいえ、本当に証明するにはクロフォードと直接対決するしかない。クロフォードは年齢的にも時間が多くないので、早くやってほしいです。ミドル級でキャッチでもいいですね。

春（4〜5月）で実現してくれたら最高。オルティスはそのあとでも間に合うと思います。

スター性と“世界観”：ナルシストでいい

エニスには華があります。動きもトランクスもかっこいい。

強い選手って、少しナルシストが多いんですよね。僕も、鏡の前で“かっこいい動き”を作るのは大事だと思っています。

今はSNSで試合がすぐ見られる時代。強さとスター性の両方が求められる。万人受けしなくていい。自分の世界観を応援してくれる人がいればいいと思います。

日本の選手へ：スイッチヒッターの現実

日本は几帳面な国民性もあって、スイッチヒッターは少ないし、トレーナーも好まない傾向があるかもしれません。

ただ、クロフォードやエニスのようなスイッチヒッターが出てきた今、増えてくる可能性はあります。

やるなら練習量は倍の覚悟で。僕自身、L字ガードを試していた時期もありましたが、あれは単に自分のブーム。実際は難しいです。

個人的な思い出：クロフォードはリング下では優しい

アメリカでシャクール vs 吉野のセコンドで帯同した時、ホテルでクロフォードに会って写真を撮らせてもらいました。

リング上では誰よりも怖く、誰よりも完璧。でも実際に会ってみると、びっくりするほど優しい人でした。
だから余計に思うんです。
「エニスとやってくれ」って。

Let’s go, Crawford！これはもう、ファンとしての願いです。

まとめ：いま見たいカードは1つだけ

• エニスは本物。
• オルティス戦はエニス有利。
• でも、時代を決めるのはクロフォード戦。

クロフォードの時代を最高の形で締めくくるのか、エニスの時代が始まるのか。
とにかく実現してほしい。僕はそう思っています。

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でも、結果が出せるかどうかは“考え方”や“向き合い方”で大きく変わります。

「このままでいいのかな」「もっと成長できるはずなのに」
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僕もこれまで、そういうタイミングを経験した選手たちを何人も見てきました。

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