こんにちは、椎野です。
先日のテレンス・クロフォード対イスラエル・マドリモフの試合についての感想を書いていきます。
この記事では、テレンス・クロフォードの苦戦の理由や階級アップの難しさについて言及していきます。階級を上げるにあたり、どんなことが重要になってくるのかも解説していきますのでぜひ最後まで読んでください。
- この記事を書いた人
- 元プロボクサー
- 世界ランキング最高7位
- 東洋太平洋タイトル獲得
20年以上のボクシングキャリアを活かし
- ボクシング特化型パーソナルトレーナー
- トレーナー育成講師
- プロ専門ボクシングトレーナー
として活動しています。
担当した選手がチャンピオンベルトを獲得した数は10本以上。勝率はプロボクシング界の中でもトップクラス。
ボクシング好きなあなたに役立つボクシング情報を発信していきます。
クロフォードVSマドリモフ:試合結果とクロフォードの苦戦
「パウンド・フォー・パウンド」で全階級を通じてナンバーワン、最強の選手の候補の一人であるクロフォードが、今回ウェルター級からスーパーウェルター級に階級を上げてタイトルマッチに挑みました。相手も無敗の選手だったのですが、クロフォードが判定勝ちでスーパーウェルター級を制覇。ライト級から数えて4階級目のタイトルを獲得しました。
今回はクロフォードが勝つだろうと思っていましたが、予想以上の僅差。本当にラスト1ラウンドを獲っていなかったら、ドローでマドリモフが防衛し、クロフォードが新チャンピオンになれないというくらいの僅差だったのは予想外でした。クロフォードが中差判定、もしくは後半ストップで勝つだろうと思っていましたが、マドリモフが予想以上に強かったです。
マドリモフはアマチュア時代に相当な実績を積んでいたと思います。ボクシングの完成度が非常に高かったです。
クロフォードはエロール・スペンス・ジュニア戦で見せたように、フィジカルの強さは相当なものです。スペンスはかなりフィジカルが強い選手ですが、それにパワーで負けず、何度もダウンを奪って圧勝した試合もありました。
クロフォードはレスリングをやっていることもあり、フィジカルは相当強いだろうと思っていましたが、階級を上げたことでそのフィジカルの優位性が薄れてくるのが顕著に見えたと思います。単に体格が大きくなるだけでなく、パンチ力やパワー、耐久力も上がってくるため、クロフォードのパンチ1発1発の効果が以前より落ちていると感じました。
また、相手の体の圧も強いため、クロフォードがより慎重にならざるを得ない場面もあったと思います。1発1発が致命打になりかねないため、慎重になる必要がありました。しかし、被弾してもクロフォードにはそれほど効いていなかったので、彼の頑丈さや目の良さが伺えました。スーパーウェルター級でも十分通用すると感じました。
階級アップの難しさと戦略
例えば、フロイド・メイウェザーも階級を上げるにつれてKO率が下がっていました。相手の耐久力が上がると無理が効かなくなってくるのです。メイウェザーだけでなく、マニー・パッキャオも元々ライトフライ級やフライ級でデビューし、最終的にスーパーウェルター級まで制覇した異次元の階級の上げ方をしています。これは異例のケースで、やはり企画外だと改めて感じました。
井上尚弥選手も元々ライトフライ級で、現在はスーパーバンタム級で活躍しています。早くフェザー級に上げろという声もありますが、本人はしっかりフェザー級の体になってから階級を上げると言っています。これが正解だと思います。無理に体重を上げて階級を上げるのは良いことは何もないと思っています。しっかり体を作らないと不利になってしまいます。
パンチ力や耐久力もそうですが、骨格の大きさは簡単に変わらないものです。階級を上げることは、単に体重を増やすことではありません。ボクシングは、軽量級では1.5キロや1.8キロ程度の違いで階級が変わります。それだけで戦い方が変わるスポーツです。軽トラックと普通自動車がぶつかれば軽トラックが壊れるのと同じように、骨格の違いが大きな影響を及ぼします。
テレンス・クロフォードのフィジカルの強さ
クロフォードのすごいところは、ライト級から上がってきたにもかかわらず、フィジカルが非常に強いというところです。フィジカルとは、主に体のパワーのことで、スピードや身体能力全般のことも言いますが、クロフォードは体の使い方や力の出し方が非常に実戦的です。例えば、ブロッキングしても体がぶれず、組んでも相手に振り回されない、振りほどかれないという強さを持っています。
これはかなり前から感じていたことで、クロフォードやワシル・ロマチェンコはレスリングが非常に強いと言われています。これは非常に大事なことで、ボクシングのシャドーやミット打ち、スパーリングばかり練習していてもそんな綺麗な戦い方はできません。悪い言い方をすると、喧嘩の強さがボクシングでは非常に重要だと思っていて、特にプロの世界ではこのフィジカルの強さが重要です。
体を組んだ時に負けると消耗も激しいです。しっかり受け止め、組んでも負けない強さは、ベンチプレスなどではなかなか身につきにくい面なので、個人的にはレスリングや組み技系の練習も必要だと思います。
ちなみに僕は組み技には自信がありました。受け止めようと思えば受け止められるし、組もうと思えば組める自信は元々ありました。相撲や柔道、レスリングなどのトレーニング で体の使い方を学ぶということも大事だと思っています。
クロフォードの今後と適正階級の重要性
少し話が逸れてしまいましたが、クロフォードは今後、スーパーミドル級のカネロ・アルバレスと対戦する可能性があると聞いています。しかし、先日の試合を見ると、相当苦しい戦いになると思っています。クロフォードも年齢を重ねているため、スピードや瞬発力が今後少し衰えるかもしれません。個人的には、アルバレスとの試合があるなら早いうちに見たいと思います。できれば1年以内に実現してほしいです。
もし試合が実現した場合、中盤から後半にかけてカネロがクロフォードを倒すのではないかと予想しています。これは階級を超えたドリームマッチですよね。クロフォードを応援していますが、カネロの方が有利、というところでやはり階級の壁は大きいと感じます。
階級上げを考えている選手は、自分の適正階級をしっかり知るべきです。階級に合わせて減量すればいいわけでもなければ増量すればいいわけでもありません。自分の適正な体重や体脂肪率などをみて、どのくらいが一番調子が良いのか、コンディションが良いのかを知っておくことが重要です。
クロフォードは僕が大好きなボクサーなので、今後も応援しています。
クロフォード対マドリモフ戦:まとめ
テレンス・クロフォードのスーパーウェルター級での挑戦は、卓越した技術とフィジカルの強さを再び証明しました。階級を上げることは単なる体重の増減以上の意味があり、選手にとっては新しい挑戦ですがリスクも伴います。階級を上げても勝つためには、クロフォードのように適正な体作りと戦略的なアプローチが重要となってきますので、覚えておきましょう!